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戦場に響く鈴の音
第4章 出陣

燕を出て3週間…。
西元の手前の街、柊(しゅう)に入る。
2万の軍勢は街に入れず、街を抜けた先にある草原を目指してる。
俺や雪南、直愛などの上級武官は馬ですぐに追いつくからと柊でひとまず止まる。
柊でやる事は食料や水の確保…。
元々、柊の商人は西元城を相手に商いを営んでた者が多く、西元が無くなった今の状況を知る為の情報源にもなってくれる。
「ここから雪南は天音に上がれ、手配は済んでるはずだからな。」
柊でも必要と思われる労働力を雇うのだが、ここから西元に向かう街道を逸れて天音湖方面へと向えば、更に街が幾つかあり雪南は人を集めながら黒崎の別邸に向かう事になる。
「黒崎様のご希望は間違いなく遂げてみせます。」
クソ真面目な雪南は一方的にそう約束をして俺達と別の道を走り出す。
「雪南殿は単身で良いのですか?」
直愛が雪南を気遣うが俺は鈴の方が心配な状況だ。
「鈴、今夜は街の宿に泊まると言っただろ?」
「だって、無いと困る。」
「宿屋には必ずある。」
まだ馬に乗れない鈴は俺の馬の上で不貞腐れる。
馬の上だと言うのに鈴は邪魔にしかならない荷物を持って来た。
それは簡易厠だ。
野良で小便が出来ない鈴の為に用意された物…。
地面に穴を掘り、その簡易厠を置いて用を足す。
折り畳みが出来るとはいえ、匂いがする木の板を鈴は背負って馬に乗る。
「臭いんだよ。」
「臭くない。」
俺の前で馬に跨る鈴の背中よりも大きな荷物が馬を操るのに邪魔になって仕方がない。
「捨てろ…。」
「絶対にやだ…。」
鈴は頑なにそう呟く。
後は俺が何を言っても右から左が鈴の耳…。
覚えてろ…。
そう脅してやりたい気持ちは大人気ないからと堪えて、鈴だけを早急に宿屋の部屋へ放り込む。

