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戦場に響く鈴の音
第36章 興奮
悔しければ狂戦士になれと佐京の目が物語る。
その手には乗らぬと俺は佐京から視線を逸らす。
松明を持つ雪南がトンネル内を誘導する。
「多栄、松明を頼りに馬を進めろ。」
暗闇で怯える馬を操るのに多栄が苦戦してる。
同じように松明を持つ佐京の方は上手く茂吉と与一の馬を誘導している。
雪南ですら出来ぬ事を佐京はいとも容易くやってのける。
日が暮れる前に天幕を張り、山脈で一夜を明かす。
「佐京…、見張りをしろ。」
そう命じても佐京は
「俺は見張りから外して貰う。」
と言い残し、闇の中へと姿を消す。
そんな日が何日か続いた明け方の事だ。
佐京が血に塗れて帰って来た。
鈴や多栄は天幕でまだ寝てる。
その天幕を囲うように雪南や茂吉が寝てる。
俺は見張りだと起きていた。
「水…、あるか?」
血に塗れた佐京が俺に言う。
竹筒に入れた水を佐京に向かって投げてやる。
「誰を殺した?」
佐京が浴びた血は返り血だ。
毎夜、毎夜、佐京は人を殺しに出掛けてたと思うだけで背筋が凍る様な気がする。
「山賊だよ。見つかる前にこっちが見つけて狩っただけだ。」
悪びれる素振りもなく答える。
「佐京っ!」
「悪いが説教なら聞く気ねえよ。やられた後なら、そんな説教は無意味だからな。」
だが、佐京がやってる事はただの人殺しに過ぎない。
「山賊に狙われたら姫さん達がどんな扱いを受けるかくらい坊っちゃんだってわかってるだろ?」
男は皆殺し…。
女子は何人もの男に犯された挙句に売り飛ばされる。
山賊は我が子であっても女子は売り飛ばす。
そうなる事がわかってても佐京がやった事を認めたくないと俺の中で怒りが湧く。