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戦場に響く鈴の音
第36章 興奮
「悪趣味だな…、神路…。」
一瞬、鈴が口を尖らせる。
「なら、お前は雪南の秘密に興味がないからと宿で大人しく留守番をするのか?」
「興味がないとは言ってないぞ。」
「だよな。」
後の事は茂吉に任せて俺と鈴だけで雪南を追う。
多栄が鈴に付き添おうとしたが、多人数になれば雪南に気付かれる危険があるからと鈴と二人だけになる。
「神路…、あそこ…。」
横道へ入ろうとする雪南を鈴が見つけ出す。
「人に悪趣味とか言いながら、雪南を追う気は満々だな。」
「別に、鈴は見失っても良いのだ。このまま神路と神国見学をするだけでも構わない。」
「神国見学よりも雪南見学の方が絶対に楽しいと思うぞ。」
「それが悪趣味だと言うのに…。」
文句を言う割に、鈴はご機嫌な笑顔を見せて来る。
ぼんやりとしてる時の鈴は確かに美しいとは言えるがまるで人形のように生気を感じられず、俺ですら戸惑う事があるが、ひとたび花が咲く様な笑顔を見せれば通りすがりの無関係な人物までもが足を止めて振り返るほどに麗しい。
その笑顔に思わず見惚れていると今度は口を尖らせて頬を膨らせる鈴へと変貌する。
「ほら、神路…、ボーッとしてると見失ってしまうぞ。」
「ああ…、そうだな…。」
こうやって感情を見せて来る鈴に安心した隙に、俺と鈴は本当に雪南を見失ってしまう。
「何処に行ったんだよ?」
何度か来てる神国とはいえ、あまりの広大さ故に、俺の知らない通りが多過ぎる。
「この辺りは向こうの大通りよりも人が少なくなった気がする。」
鈴が少し怯えて俺の袖を握る。
「確か…、職人が集まってる辺りだと思う。」
俺ほど神国には来てないはずの雪南に神国でわざわざ尋ねる場所があるとは思えない。