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戦場に響く鈴の音
第1章 謀叛

いずれの後、直愛は御館様の臣下として俺の隣りに並ぶ予感がする。
「なら御館様に刃向かう逆賊と化した梁間を討つ事に何の躊躇いもなかろう?」
「逆賊は梁間の首、我が主君の為に某(それがし)が討ち落とす所存であります。」
「その心、御館様へ充分に伝えてやる。」
直愛の義を確認し、雪南と直愛を伴い本丸へ向かう。
「黒崎様、良いのでありますか?」
俺の軍師雪南が眉を顰め、声を潜めて尋ねる。
「何がだ?」
「梁間討伐の命を受けたのは黒崎様であります。」
「それが?」
「それが大城主様、直属の命であらせられます。」
俺の手柄を直愛に譲るのかと雪南が鼻息を荒くする。
くだらない事だと俺は雪南を笑う。
「黒崎様!?」
「案ずるな。御館様の命は梁間の討伐。どんな手段であったとしても俺は梁間が討伐されれば御館様から褒められる。」
「ですが…。」
雪南が直愛をチラ見する。
初対面の直愛に手柄を譲るならば俺に付く家臣の一人に手柄を与えた方が黒崎の一門にとって為になると雪南は考えてる。
この戦にと俺の軍勢が大河領地であり蘇の首都である燕(えん)を出立して、ひと月あまり…。
実際のところ、このひと月で、梁間が由から流れ込んだ野盗の類いに討ち落とされたとしても俺の役目は無事に果たされたと御館様は結果だけに満足して下さる。
だから俺の保身は必要が無く、俺に同行する家臣もそれは同じ。
直愛はそうは行かぬ。
軍議にて梁間討伐が決定した瞬間に目付け失敗の責務が直愛には課せられてる。
直愛は奥州、直久(なおはる)の息子。
大河付き武官の息子に筆頭老中の息子が恩を売っておく事は今後の黒崎一門にも御館様にとっても有難い話であり損は無い。

