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戦場に響く鈴の音
第7章 士気



3日後…。

戦場に雨が降る。

直愛が安堵の表情で俺を見る。

退屈な軍議が毎日のようにダラダラと続く。

その中で須賀や直愛は恵みの雨だと言葉を交わす。

西元は春が終わり雨季に入った。


「何故、恵みの雨だ?」


須賀にそう聞いてやる。


「そりゃ、天音が増水して笹川の軍勢はこちらに手出しが出来なくなりますから…。」


当たり前の事を須賀は答える。

この3日間、笹川とは川向こうから矢を射たり、こちらから投石を飛ばしたりとつまらない小競り合いが続いた。

お陰で笹川の考えの殆どが俺には見えた。


「その増水はいつまで続く?」


再び、須賀に質問する。


「いつまでって…。」


雨季が終わるまで…。

雨季はせいぜい、ひと月…。

それが終われば夏になり乾季に変わる。

この雨季が田植えの季節に適してる。

しかし乾季に入れば人手が増える。

そして天音川は逆に水嵩が減り馬に頼らず人の脚でも簡単に渡る事が出来るようになる。


「ならばっ!?」


直愛が今更になって叫ぶ。


「そう、万里の狙いは元々乾季だ。兵も多分、今の倍の数にはなる。乾季になって派手な10万の兵で西元を落とせば蘇は10万に対し尻込みすると考えてやがる。」


乾季になった時、本格的に攻め込む為には籠城が容易い砦が邪魔になると判断して先に焼き払った。

蘇からすれば砦を新たに築城するにしても5万の兵と睨み合いが続く中での築城は難しい。


「そこまで考えて…。」


須賀が怒りを露わにする。


「だとすれば、乾季に向けて大城主に増援を要請するべきかと…。」


直愛が弱音を吐く。


「そんな事すりゃ、秀幸が馬でスキップして現れるだけだぞ。」

「今は、そんな事を言ってる場合では…。」


万里との勝負までひと月…。

秀幸に甘えるのだけは嫌だと俺は駄々を捏ねるガキに成り下がる。


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