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戦場に響く鈴の音
第7章 士気



無表情なくせにやたらと目立つ美しい顔で誘うように俺を見る。

この綺麗な顔で…。

梁間と…。

それを考えるだけでまた吐き気がする。


「神路…、また怖い顔をしてる。」

「俺にはお前がわからん。俺は梁間と同じか?」


俺の質問に鈴が眉を寄せて考える。

ゆっくりと本気で考え込む。


「梁間とは違うと神路が言った。鈴もそう思う。梁間が触る時は気持ち悪かった。だから鈴は何も考えないようにしてた。神路のは違う。神路には触って欲しいと思う。それに…。」

「それに…。」

「鈴が神路に触りたい。」


そう言った鈴がふわりと飛んだように見えた。

次に感じたのは鈴の柔らかな唇の感触…。

俺の首に腕を回し鈴が俺の口に唇を押し付ける。

鈴の唇が俺の唇を喰み、小さな舌が俺の唇を舐める。

俺の頭が熱くなる。

身体中の血が沸騰する。

俺を焦らすように鈴がゆっくりと俺から唇と身体を離す。

そして綺麗な瞳で俺の目を覗き込む。


「神路は嫌か?」


また無表情な鈴が俺に偉そうに聞いて来る。


「このエロガキ…。」

「嫌なのか?」

「そうじゃなくて…。」


鈴を抱え直して飯を食わせる。


「俺は鈴とこうやって一緒に飯を食ったりするだけでいいんだよ。」

「そんな事は毎日してる。」

「そうじゃない。話をしてお前が笑ってくれればそれが一番だと思う。」

「笑う?」

「そう…、お前、変な時しか笑わないからな。」

「鈴は普通に笑うぞ。」


真顔でそう言う鈴がやはり可愛いと思う。

だけどこの仔猫をどうにかしたい欲望はない。


「笑ってねえよ。」

「神路の考え過ぎだ。」


自分の無表情に気付いてない。

それだけ梁間が付けた鈴の心の傷は深かったのだと思うと憐れでならない。


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