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戦場に響く鈴の音
第7章 士気
熱血お坊ちゃんは面倒だと俺は欠伸をする。
「神路殿っ!」
「そんなに雪南だけが頼りか?」
「当たり前です。」
「俺を誰だと思ってる?」
ありったけの殺気を馬鹿な直愛に放ってやる。
「それは…。」
実戦の少ない直愛がまたしても狼狽える。
「俺は大河の拾われっ子だぞ。」
俺が野盗に居た頃の蘇国はあの冴国ですら攻め込んで来た。
由からも攻め込まれ、国中に野盗が蔓延する中で御館様は容赦なくそれらを一掃すると心に決めた。
御館様がやったのはまずは冴の制圧…。
魔王が通った後には草木一本生えぬと言われるほど御館様は残忍に冴の3分の1を制圧する。
たまりかねた冴の大城主は自分の姪を御館様に差し出し、蘇との同盟に同意した。
そして支羅の討伐…。
あの時の唯一の生き残りは俺だけだ。
その後の御館様は戦場に俺を連れ歩く。
魔王の行軍を俺は何度もこの目で見た。
戦場で生き残りたければ相手の上をいけと御館様に教えられた俺がハッタリばかりの万里などに負けはしない。
「ならば何故、雪南殿は戻らないのです?」
いつまでも援軍を寄越さない雪南が天音で何をやってるのだと直愛が不満の声を上げる。
「雪南を信じろ。俺はあいつに騙された事だけは無い。」
俺は雪南を信じてる。
この戦はあいつだけが頼りだ。
人に対してやたらと口煩い雪南ならば必ずや、俺が頼んだ仕事をやり遂げてくれるはず…。
今、それを直愛に言っても無駄な事だと俺は直愛を無視して鈴を抱き上げる。
「鈴、次は何をする?」
わざとらしく鈴の髪に口付けをして鈴との時間の邪魔をするなと直愛に見せ付けてやる。