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戦場に響く鈴の音
第7章 士気



乾季まで時間が無い。

誰もがそれを理解してる。

今朝の軍議はいつもに増してピリピリとする。

その中で俺は一段と苛立ちを見せる。


「そいつの首を切り落としてやるから連れて来いよ。」


直愛に向かってそう迫る。


「そんな事をすれば…。」


事態は最悪になると須賀が言う。


「俺が連れて来いって言ってんだよ。誰が俺の小姓を殴ったっ!」


昨夜、俺の天幕用の水汲みに出た鈴が兵士に襲われた。

兵士は3人居たと顔を腫らした鈴が言う。

いきなり殴られて3人に鞠のように蹴られた鈴は肋骨を折り今は安静が必要な状況だ。


「申し訳ございませんが、今は戦中にて、この1件は堪えて頂きたいくお願い申し上げます。」


直愛が俺の足元でひれ伏す。


「堪えろ?ならばお前が馬鹿な兵士達の代わりに切られるか?直愛…。」


刀を抜こうとする俺を須賀が止める。


「お言葉ですが、黒崎様っ!戦場においての兵士の生命の重さは…。」

「小姓よりも重いってか?だからって、たった6つの子を嬲(なぶ)り者にするのが兵士のやる事か!?」


敗戦目前に小姓とイチャつく馬鹿大将の目を覚ましてやると意気込んだ兵士達を直愛も須賀も庇う事しか考えてない。

ふざけんな。

俺だって小姓上がりだ。

秀幸だって同じだ。

戦場での小姓の生命が軽いと誰が決めた?

御館様は小姓だろうと誰にも手出しをさせなかった。

俺が未熟だから鈴がその仕打ちを受けた。

反吐が出そうだ。

こんな奴らの為に俺は戦うのか?

そこまで考えてしまう前に


「伝令でありますっ!北側、天音より狼煙が上がっております。」


と伝令の声がする。


「神路殿っ!」


直愛が叫ぶ。


「わかってる。すぐに狼煙を返し、西元跡まで兵を引け…。」

「兵を引くのでありますか?」

「わかり切った事を聞くなっ!」

「御意っ!」


直愛と須賀は意味がわからないまま俺の命令を実行する。


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