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泥だらけのお姫様
第6章 溺れるのは禁断の果実で優しい不実の麻薬
***
次の日、私は年甲斐もなく浮かれていた。優祐が帰る前に家を出て、レンタルスペースへと行く。まだ数はないが一ヶ月目のお給料でここを借りて、二ヶ月目のお給料で合わせて少しお洋服やアクセサリーを買っていれた。
まだ数はないが自分だけの空間を持てて、今まで感じたことのない自由を手に入れた気分だ。優祐と結婚する前の実家は過保護で結婚も順序が違ったのも優祐だから許してもらえたようなものだ。優祐と繋がった一度だけのあの日も急な欠員が出て、レジ〆の仕事だと嘘をついたのだ。遊びだとダメなのに仕事だと仕方ない……それはそれで不思議な理屈だと思う。
大人びた肩出しトップスにセットアップの某ブランドを沸騰とするチェックのスカートを履く。首には憧れのオーブのネックレス。将さんを引かせてしまうかもしれないが、左手には、あえて結婚指輪をつけた。
私も貴方と同じなの。配偶者に愛されない孤独──。孤独を分け合える共犯者になれたなら。
彼は、──将さんは来てくれるだろうか。髪の毛をコテで巻いて、モードなデパコスコスメで勝負メイクをして、赤のランジェリーを身に付けた。情熱的な愛。それが少しでも伝わって欲しい。そんな想いを込めて。
世間では今日の私は、量産型とか地雷とか言われるのだろうか? そんな言葉は相変わらず嫌い。人は記号ではない。私の良さを将さんはきっと理解してくれる。来てくれる。今はただ、そう信じるしかないと、レンタルスペースを後にした。