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泥だらけのお姫様
第6章 溺れるのは禁断の果実で優しい不実の麻薬
将さんが来てくれる。そして、私を受け入れてくれる。そう信じて、高級ホテルの部屋番号をキープした。
カフェに少し早くつきすぎて、私はスマホを開き、携帯小説を読んだ。結局、旦那エンドの不倫もの。私が今からしようとしていることもこの主人公と同じ。これは錯覚なのか、幻なのか……ううん、今は考えないようにしよう。そう思った時だった。
「あいさん?」
将さんだった。
「美愛でいい。どうせ、お店にはもう来ないでしょ? ってか来なくていい。ご家族の負担になるし……。その代わり、来てくれたってことは……」
私はホテルの部屋番号のメモを見せる。
「えっ……」
「今は私のこと好きじゃなくてもいい。だけど、私の好きに答えてくれるために来てくれたん……だよね?」
「そんな目線……ズルいです。でも俺も美愛さんにまた会いたいって思ったのは、もっと触れてみたいって思ったのは事実だから、ついて行きます」
私は上目遣いを意識した。涙袋もいつもより入念に書いている。
「素直でよろしい。じゃ、いこ……私、もうっ……」
「美愛さん……」
彼は戸惑いながらも私について店を後にした。