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泥だらけのお姫様
第8章 泥だらけのお姫様
「今、お茶しかないわ。お茶でいい?」
「母さん……これ……」
「ん?」
振り返ると優希がメンタルクリニックの袋を持って、使用済みオムツの入ったゴミ箱を指さしていた。忙しくて、色々なことで頭がいっぱいで片付けることを失念してしまっていた。しまったっと思った時には遅かった。そして……
「入らないで」
私の制止を無視して、私の部屋の扉をあける。床には、安い時にまとめ買いしていたオムツの袋。恨み言を書いて黒く塗り潰したノートがテーブルの上に散乱していた。
「ごめんね……私……弱いからさ、心が壊れちゃったみたい。大人なのにね、子どもに戻ってしまう時が……体はどこも悪くないのにね、おねしょとか……治らないどころか悪化してくの。こんな私が母親で……ごめんね……」
後ろから温かい感触がして、大きくなった手に包まれて、耳元で囁かれる。
「ごめん。俺が……逃げたから。遠い学校に通ったから」
「違うの……」
こんな時なのに思い出したのは、将さんの笑顔。だって、優希がぽんぽんっと優しく頭を撫でるから。優希の手に思わず、涙の雫を落としてしまう。