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泥だらけのお姫様
第3章 泥にまみれてく

          ***

 息子が修学旅行の日。案の定、優祐は朝帰り。リビングで珈琲を飲んでいる。

「お帰りなさい」

 眠れなかった夜。帰ってこない夫。隅から隅までの部屋の掃除で見つけたのは……。

「何、これ……?」

 緊迫◯◯。女の縛り方。おしがま◯◯。濡れ濡れJK我慢の果てに……。並ぶのは過激なタイトルのDVDや小説。哲学だの文学だの真面目な本の後ろに隠されていたもの。ありきたりな隠し場所なのに、思い込みとは怖い。

「こういうの好きだったんだ……」

 19:00。まだ間に合う。私は、自転車で行ける大型ショッピングモールに行き、真っ赤なベビードールとパンティーとガーターベルトのセットの下着をお迎えした。24時間のゴリラのマークのお店で縄や手錠も揃えた。

 優祐の好みがそれならそれでいい。優祐のためなら、縛られることも排泄を道具とすることも厭わない。何でもする。愛されたい。優祐に愛される為なら、なんだって、努力も、勉強も……。私より彼を愛せる人なんて、この世にいない。この時は、本気で思っていた。世界の中心は、自分じゃないと許せない。物心ついた時から、ずっとずっとずっと、優祐を好きだったのは、私。
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