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泥だらけのお姫様
第3章 泥にまみれてく

 ばさっ……。

 テレビの前に立ち、トレーナーワンピースのパジャマを脱ぐ。

「ちょっ……?! おま、何してんだよ?!」

 真っ赤なベビードールとガーターベルト。髪は、後ろで簪で纏めている。メイクも優祐からプレゼントして貰ったデパコスで綺麗にした。二重にも。

「こういうの……好きなんでしょ? 私を……抱いて」

「はぁ?! そんな、ぽっちゃりした腹見せられたって、そそられるかよ? 冗談言ってるんじゃないよ。なっ……?」

 どうして、そんな冷たい目で見るの? 私は本気なのに。確かに私の身長でこの体重はぽっちゃりなのかもしれない。

 フワッと優祐から香ってきたのは、若い女の子の間で人気な安っぽいブランドの香水の匂い。私は構わず、優祐に股がって、キスをした。珈琲に混じって流れてくる甘ったるい味。チョコレート? 甘いものは好きじゃない。そう言っていたのに、チョコレートなの……?

 ばんっ!!

「痛っ……っ……」

 強引にはね飛ばされて、背中をテーブルに打ち付けた。残っていた珈琲が溢れて、新品のベビードールは茶色の染みを作る。

「ごめんっ……」

 優祐は呟くと、二階へと上がっていった。
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