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狼に囚われた姫君の閨房録
第10章 芹沢鴨の放火事件
半刻(一時間)がすぎた。私は三回も達した。
「容保様……もう……」
果てしなく繰り返されるピストン運動に、私は息も絶え絶えになった。
私の中の容保様の雄が膨張し始めた。
また、波がくるのだ。熱い荒波が……!
受け止めなければ!!
歯を食いしばって、容保様の吐精を迎え撃とうとした瞬間。
いきなり、容保様は私に刻んでいた楔を引き抜いた。そして、滓を木目の床に放った。
「……容保様?」
不思議そうな私の唇を、容保様は指先で押さえた。そして、階段下に視線をやった。
「山崎か?」
「はっ」
階段のすぐ下から、山崎の声がした。いつから、そこにいたのか?
「何かあったか?」
「芹沢局長のご乱行です」
山崎は声を落とした。
「葭屋町に大和屋という生糸問屋があります。そこに、芹沢局長が砲撃を加えました」
「砲撃だと?」
容保様の顔色が変わった。小刻みに震える私の肩を抱き寄せる。
「商家に大砲を打ち込んだってのか?」
「御意」
「被害状況は?」
「幸い、負傷者はいません。大和屋は今も炎上しており、副長たちが消火の協力に駆けつけました」
私は窓の外を見た。
外は夕暮れ。相撲の取り組みも終わり、平隊士たちが土俵の後片付けをしている。
遠くで、紅蓮の炎が上がっているのが見えた。かなり、大火になりそうだ。
「よし、俺も行こう」
容保様が立ち上がる。私は慌てて着物を着せかけた。
「芹沢鴨は土方の言うことなど、聞きはしまい。俺が止めてくる」
私は、本庄宿での一件を思い出した。
あの時も、芹沢鴨は放火をしてのけたのだ。父が部屋割りを忘れた……ただ、それだけのことで。
「私も、お供を」
袴をつけた容保様は、私の髪の毛をくしゃっとさせた。
「お前は謹慎中だろう。土方に怒鳴られたくないなら、おとなしくしてろ」
そして、階下の山崎に下知した。
「俺の馬を引いてこい! それから、相馬と野村にすみれを浄めさせろ!!」
「ははっ」
山崎が外に出る気配。続いて、容保様が階段を荒々しく駆け下りた。
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