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狼に囚われた姫君の閨房録
第2章 浪士組結成
「これは一体……」
伝通院の山門で、私は足を止めた。
人相の悪い素浪人たちがひしめく境内に、木枯らしが吹き荒ぶ。およそ、三百人はいようか?
刺青を腕に彫った者や、こじきのような風体の者。刀をさしてはいるが、まともな武士は一人もいない。
「もう少し、マシな連中だと思ったか?」
私のすぐ後ろで、低い声がした。土方歳三が着物のたもとに突っ込んだ手を組んでいた。
図星をさされて、私はうなずいた。
「このような者たちに、将軍様の警護がつとまりましょうか?」
「何言ってやがる? 務まるわけねえだろ」
「でしたら、なぜ……」
わざわざ江戸中から集めたんだ?と言うより先に、原田左之助が私の頭を撫でた。
「ゴロツキどもを江戸から追い出すためさ」
背が高くて、均整の取れた体つき。切腹騒ぎで、伊予藩を脱藩している。
「江戸は今無法地帯だからな。大老がいなくなったのをいいことに、チンピラどもが好き放題してるのよ」
「考えてもみるがいい。将軍家には、直参旗本がついている。わざわざ、警護の者を集める必要がどこにあるのだ?」
一の言葉に、私は二の句がつげなくなった。
「支度金をはずめば、ハイエナがたかってくるからね。一網打尽にして、京に追い払っちまおうって寸法だよ」
楽しそうに、総司も言う。将軍警護の手勢にもなるし、一石二鳥の策だ。
「そして、その案を幕府に出したのが、あいつ」
総司は処静院の長い石段に顎をしゃくった。
役者かと見紛うばかりの美男子が佇んでいる。色白で、細面で、凶々しい妖気を纏っていた。
「今回の立役者、庄内藩浪士・清川八郎だよ」
伝通院の山門で、私は足を止めた。
人相の悪い素浪人たちがひしめく境内に、木枯らしが吹き荒ぶ。およそ、三百人はいようか?
刺青を腕に彫った者や、こじきのような風体の者。刀をさしてはいるが、まともな武士は一人もいない。
「もう少し、マシな連中だと思ったか?」
私のすぐ後ろで、低い声がした。土方歳三が着物のたもとに突っ込んだ手を組んでいた。
図星をさされて、私はうなずいた。
「このような者たちに、将軍様の警護がつとまりましょうか?」
「何言ってやがる? 務まるわけねえだろ」
「でしたら、なぜ……」
わざわざ江戸中から集めたんだ?と言うより先に、原田左之助が私の頭を撫でた。
「ゴロツキどもを江戸から追い出すためさ」
背が高くて、均整の取れた体つき。切腹騒ぎで、伊予藩を脱藩している。
「江戸は今無法地帯だからな。大老がいなくなったのをいいことに、チンピラどもが好き放題してるのよ」
「考えてもみるがいい。将軍家には、直参旗本がついている。わざわざ、警護の者を集める必要がどこにあるのだ?」
一の言葉に、私は二の句がつげなくなった。
「支度金をはずめば、ハイエナがたかってくるからね。一網打尽にして、京に追い払っちまおうって寸法だよ」
楽しそうに、総司も言う。将軍警護の手勢にもなるし、一石二鳥の策だ。
「そして、その案を幕府に出したのが、あいつ」
総司は処静院の長い石段に顎をしゃくった。
役者かと見紛うばかりの美男子が佇んでいる。色白で、細面で、凶々しい妖気を纏っていた。
「今回の立役者、庄内藩浪士・清川八郎だよ」