この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
母親失格
第1章 母親失格
―――兄貴がお前を連れてきた日から、ずっとお前のことが好きだった。
あの日。
臨月の私を抱いた義弟は、私にそう言った。
夫にはあの時すでに浮気相手の女が居た。
…今の女とは違うけど。
『一緒に仕返ししようよ』
義弟はそう言って、私にキスしたんだ。
あれから何年になるだろう。
何年、義弟とこんな関係を続けているのだろう。
夫を責める権利なんて、私にはないだろう。
「そろそろ兄貴に俺たちのことを話して、一緒に全部ブッ壊そうよ」
時々、義弟は怖いことを言う。
次兄と同じだ。
次兄も同じことを言っていた。
『俺は結婚もしないし、お前らみたいに孫の顔見せて親孝行できないから、せめて兄貴のぶんまで最期まで親の気に入る息子でいたい。
でも、時々考えるんだわ。
本当のことを話して、いっそ壊してしまいたい、なんて』
時々、私も思う。
長女次女だけを連れて、義弟とどこかに消えてしまおうかと。
喧嘩して夫が私を殴ったあとや、浮気相手の女に会いに行くとき、特にそう思う。
だが私は長男を置いて行けない。
母親である自分だけは捨てられないからだろう。
『お母さんの不倫相手に会ったことある?』
長男を出産後、実家帰省中。
私は次兄に尋ねたことがある。
『あぁ、知ってる。長いよな。まだ続いてるみたい。兄貴の葬式にまで来てたもんな』
次兄はため息をついてた。
『小さい頃夜中に目が覚めて、見たら母さんが裸で泣いてた。母さんは父さんの子供を4人も生んで、幸せじゃなかっただろうな』
―――でなきゃ不倫なんかしないよな。
次兄の言葉が義弟の言葉にだぶる。
「なんで話しちゃダメなの?
幸せじゃないから、俺を呼び出すんだろ?」
翌朝、私が作った弁当を持って、義弟は仕事に行った。
子供部屋で眠っている、長女と次女の頭を撫でてから。
あの日。
臨月の私を抱いた義弟は、私にそう言った。
夫にはあの時すでに浮気相手の女が居た。
…今の女とは違うけど。
『一緒に仕返ししようよ』
義弟はそう言って、私にキスしたんだ。
あれから何年になるだろう。
何年、義弟とこんな関係を続けているのだろう。
夫を責める権利なんて、私にはないだろう。
「そろそろ兄貴に俺たちのことを話して、一緒に全部ブッ壊そうよ」
時々、義弟は怖いことを言う。
次兄と同じだ。
次兄も同じことを言っていた。
『俺は結婚もしないし、お前らみたいに孫の顔見せて親孝行できないから、せめて兄貴のぶんまで最期まで親の気に入る息子でいたい。
でも、時々考えるんだわ。
本当のことを話して、いっそ壊してしまいたい、なんて』
時々、私も思う。
長女次女だけを連れて、義弟とどこかに消えてしまおうかと。
喧嘩して夫が私を殴ったあとや、浮気相手の女に会いに行くとき、特にそう思う。
だが私は長男を置いて行けない。
母親である自分だけは捨てられないからだろう。
『お母さんの不倫相手に会ったことある?』
長男を出産後、実家帰省中。
私は次兄に尋ねたことがある。
『あぁ、知ってる。長いよな。まだ続いてるみたい。兄貴の葬式にまで来てたもんな』
次兄はため息をついてた。
『小さい頃夜中に目が覚めて、見たら母さんが裸で泣いてた。母さんは父さんの子供を4人も生んで、幸せじゃなかっただろうな』
―――でなきゃ不倫なんかしないよな。
次兄の言葉が義弟の言葉にだぶる。
「なんで話しちゃダメなの?
幸せじゃないから、俺を呼び出すんだろ?」
翌朝、私が作った弁当を持って、義弟は仕事に行った。
子供部屋で眠っている、長女と次女の頭を撫でてから。