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母親失格
第1章 母親失格
「おれ、ママのお腹の中に居たときのこと覚えてるよ」
晩に帰宅した夫と共に過ごす夕食の場で、突然長男がそんな話を始めた。
珍しく夫が、長男の話に興味を示した。
「へぇ、すごいな」
「パパ、何回も《女だったら嫌だな》って心配してたでしょ」
事実だ。
夫と顔を見合わせる。
夫が長男に質問した。
「マジで?パパとママの話聞こえてたってこと?」
「うん。喧嘩してる声も聞こえた。ママが泣いてて、パパがキレてた」
「はぁ?そんなわきゃねぇだろー」
夫がバツが悪そうに頭を掻いてる。
長男が言った。
「それからね、ママがよくお腹の中のおれに話しかけてくれたよ。元気に生まれておいでって。
パパのこと怒ってるのも聞こえた。帰らないなら帰らないで連絡ちょうだいって、夕飯もったいないからって」
「へー、そんなことまで…」
「それから、叔父ちゃんもたくさん話しかけてくれたよ」
「アイツが?」
「うん。叔父ちゃんがおれに話しかけると、ママは1番幸せなんだ。お腹の中に居るからおれ、分かるんだ」
「そんなわけないでしょ?パパに話し掛けてもらったのを勘違いしてるのよ」
私が言うと、
夫はハハハッと笑った。
長男は真面目な顔だ。
「でも、ママは叔父ちゃんの名前を呼んでた。おれに話掛けたあと、叔父ちゃんがママに、キスしていい?って聞くんだ」
「それパパだよ。パパはママが大好きだから毎日チューしてたもん」
私が言うと、長男は真剣な顔で首を左右に振った。
「違うよ。おれ、ハッキリ聞こえてた。叔父さんがキスしていい?って聞いて、それから、ママが言うんだ。会えて嬉しいって。
昨日もそうだよ。叔父さんが来てた。
おれ、もう子供じゃないんだよ。
パパがしてることも、ママがしてることも、全部知ってるんだ。
パパにはママ以外の女の人がいて、
ママは本当は叔父さんが好きなんだ、そうでしょう?」
夫は、今度は笑わなかった。
晩に帰宅した夫と共に過ごす夕食の場で、突然長男がそんな話を始めた。
珍しく夫が、長男の話に興味を示した。
「へぇ、すごいな」
「パパ、何回も《女だったら嫌だな》って心配してたでしょ」
事実だ。
夫と顔を見合わせる。
夫が長男に質問した。
「マジで?パパとママの話聞こえてたってこと?」
「うん。喧嘩してる声も聞こえた。ママが泣いてて、パパがキレてた」
「はぁ?そんなわきゃねぇだろー」
夫がバツが悪そうに頭を掻いてる。
長男が言った。
「それからね、ママがよくお腹の中のおれに話しかけてくれたよ。元気に生まれておいでって。
パパのこと怒ってるのも聞こえた。帰らないなら帰らないで連絡ちょうだいって、夕飯もったいないからって」
「へー、そんなことまで…」
「それから、叔父ちゃんもたくさん話しかけてくれたよ」
「アイツが?」
「うん。叔父ちゃんがおれに話しかけると、ママは1番幸せなんだ。お腹の中に居るからおれ、分かるんだ」
「そんなわけないでしょ?パパに話し掛けてもらったのを勘違いしてるのよ」
私が言うと、
夫はハハハッと笑った。
長男は真面目な顔だ。
「でも、ママは叔父ちゃんの名前を呼んでた。おれに話掛けたあと、叔父ちゃんがママに、キスしていい?って聞くんだ」
「それパパだよ。パパはママが大好きだから毎日チューしてたもん」
私が言うと、長男は真剣な顔で首を左右に振った。
「違うよ。おれ、ハッキリ聞こえてた。叔父さんがキスしていい?って聞いて、それから、ママが言うんだ。会えて嬉しいって。
昨日もそうだよ。叔父さんが来てた。
おれ、もう子供じゃないんだよ。
パパがしてることも、ママがしてることも、全部知ってるんだ。
パパにはママ以外の女の人がいて、
ママは本当は叔父さんが好きなんだ、そうでしょう?」
夫は、今度は笑わなかった。