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母親失格
第1章 母親失格
突然実家を訪れた私に、母は焼きそばを作ってくれた。
「お母さん、わたし、離婚してもいい?」
食べ終わってから、私は言った。
「はぁ?」と顔をしかめた母親の前歯には、青のりが付着していた。
「離婚だなんて、アンタまたどうして」
「夫君が不倫してる」
「そんな…アンタと別れて不倫相手と一緒になるって?」
「ううん。夫君は離婚したくないって言ってる」
「それならアンタ、許してあげなさいよ。男の人は少しくらいの女遊びは仕方ないよ」
「私にも付き合ってる男性がいるの」
「アンタ…?!」
驚愕のふた文字を顔全体に浮かべる母。
前歯に付着した青のりがシュールだ。
「アンタって子は!子供がいるのにそんな…母親失格だよ!なんて淫乱な女なんだろう」
「お母さんも不倫してたくせに」
母の顔がみるみるうちに青ざめていく。
「私たちが子供だと思ってバカにしてたかも知れないけど。みんな全部知ってたよ。
なんで離婚しないのかなって、いつも思ってた」
「なんでって…お母さんはアンタ達のために…。
子供には父親が必要だから…」
「でも、父親がいても長兄ちゃんは自殺したじゃん」
「アンタって子は…お母さんのことが嫌いだからそんなこと言うの…?お母さんはアンタ達のために今まで色んなこと我慢して生きてきて…」
「お母さん。自由になりなよ。
生きたいように生きていいんだよ?
お母さんの人生なんだから」
母は泣いてた。
いいや。長兄ちゃんが死んでから、いつも泣いてた。
泣けるのが私はうらやましい。
「ねぇお母さん。
お母さんは、自由に生きる勇気がないから、泣いて誤魔化してるの?」
―――もしかしたら。
長兄は、自由に生きる勇気がなかったのだろうか。
実家から帰る電車の中で、流れていく景色を眺めながら、ふと思った。
「お母さん、わたし、離婚してもいい?」
食べ終わってから、私は言った。
「はぁ?」と顔をしかめた母親の前歯には、青のりが付着していた。
「離婚だなんて、アンタまたどうして」
「夫君が不倫してる」
「そんな…アンタと別れて不倫相手と一緒になるって?」
「ううん。夫君は離婚したくないって言ってる」
「それならアンタ、許してあげなさいよ。男の人は少しくらいの女遊びは仕方ないよ」
「私にも付き合ってる男性がいるの」
「アンタ…?!」
驚愕のふた文字を顔全体に浮かべる母。
前歯に付着した青のりがシュールだ。
「アンタって子は!子供がいるのにそんな…母親失格だよ!なんて淫乱な女なんだろう」
「お母さんも不倫してたくせに」
母の顔がみるみるうちに青ざめていく。
「私たちが子供だと思ってバカにしてたかも知れないけど。みんな全部知ってたよ。
なんで離婚しないのかなって、いつも思ってた」
「なんでって…お母さんはアンタ達のために…。
子供には父親が必要だから…」
「でも、父親がいても長兄ちゃんは自殺したじゃん」
「アンタって子は…お母さんのことが嫌いだからそんなこと言うの…?お母さんはアンタ達のために今まで色んなこと我慢して生きてきて…」
「お母さん。自由になりなよ。
生きたいように生きていいんだよ?
お母さんの人生なんだから」
母は泣いてた。
いいや。長兄ちゃんが死んでから、いつも泣いてた。
泣けるのが私はうらやましい。
「ねぇお母さん。
お母さんは、自由に生きる勇気がないから、泣いて誤魔化してるの?」
―――もしかしたら。
長兄は、自由に生きる勇気がなかったのだろうか。
実家から帰る電車の中で、流れていく景色を眺めながら、ふと思った。