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第1章 母親失格

　夫は長男らしい長男だ。
　会社では義祖父、舅、あとはベテランの職人さん1人と共に働いている。

　元は義祖父が若い頃に立ち上げた会社で、現在の社長は舅だが、舅も義祖父も、夫の機嫌を取ってキツイことは全然言わない。
　働いてくれてる職人さんも、夫の言動に呆れてるくらいだ。
　わがまま言い放題、夫はきっと他所では働けないだろう。


　以前は職人さんの代わりに、義弟が一緒に働いていた。
　だが、夫と…いや。
　義祖父とも舅とも…つまり全員と反りが合わず、今は他所の土建屋で働いてる。


　そりゃそうだろう。
　夫は横暴な態度だし、すぐ暴力を振るう。　

　そして義祖父と舅は夫に対して溜まった鬱憤を、すべて義弟に理不尽にぶつけるのだ。

　舅は、夫のことは絶対殴らないどころか叱りもしないのに、義弟を頻繁に殴る。
　ずっと昔からだそうだ。
　義祖父もそうだったらしい。
　義弟はやってられないだろう。


　夫は言う。
「まぁ、俺は長男だし甘やかされても仕方なくない？」



　夫は反省などしない。
　どんな我儘も受け入れられて当然という環境で育ってきたからだ。