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母親失格
第1章 母親失格
義弟が私に初めて触れたのは、結婚して初めて迎えた正月が過ぎた頃…。
私はまだ10代で、長男を妊娠中だった。
あの日。夫と大喧嘩して自室に籠もった義弟に、わたしは料理を運んでいったんだと思う。
思えばあれが、義実家で義弟と会った最後だ。
「殴り返せばいいのに」
私はそう声をかけて、料理をテーブルに置いた。
夕方だったのか…カーテンの開いた室内は暗かった。
義弟は布団を被ってふて寝していた。
だから返事の声が籠もって聞こえた。
「俺みたいな捌け口がいるから、この家族は円満なんだよ」
枕元を覗き込むと、義弟が顔を出した。
「でも俺、来月からこの家出るから。
やられっぱしじゃないよ。いつか仕返ししてやるんだ。
だから心配しないで」
義弟の手が布団の中から伸びてきて…
私の頬に、一瞬だけ触れた。
暖かい手だった。
あのとき、何かが狂い始めていると、気付けば良かった。
義弟といっても私より年上の義弟のことを、私は兄みたいに慕ってた。
夫とは違って穏やかな性格の優しい義弟は、自殺した長兄とどこか被るところがあった。
だから、姑から託された差し入れを、引っ越し先のアパートに一人きりで届けに行って。
招き入れられるまま、部屋に上がったのだと思う。
私は驚いた。
臨月近い妊婦…いや。
正確には、臨月近い妊婦の兄嫁だ。
そんな人間に欲情できるもんなんだな、と。
最低な母親だ。
つくづく、自分をそう思った。
お腹の中に夫の子供がいるのに、ろくに拒むこともせず…夫の弟に抱かれるなんて。
私はまだ10代で、長男を妊娠中だった。
あの日。夫と大喧嘩して自室に籠もった義弟に、わたしは料理を運んでいったんだと思う。
思えばあれが、義実家で義弟と会った最後だ。
「殴り返せばいいのに」
私はそう声をかけて、料理をテーブルに置いた。
夕方だったのか…カーテンの開いた室内は暗かった。
義弟は布団を被ってふて寝していた。
だから返事の声が籠もって聞こえた。
「俺みたいな捌け口がいるから、この家族は円満なんだよ」
枕元を覗き込むと、義弟が顔を出した。
「でも俺、来月からこの家出るから。
やられっぱしじゃないよ。いつか仕返ししてやるんだ。
だから心配しないで」
義弟の手が布団の中から伸びてきて…
私の頬に、一瞬だけ触れた。
暖かい手だった。
あのとき、何かが狂い始めていると、気付けば良かった。
義弟といっても私より年上の義弟のことを、私は兄みたいに慕ってた。
夫とは違って穏やかな性格の優しい義弟は、自殺した長兄とどこか被るところがあった。
だから、姑から託された差し入れを、引っ越し先のアパートに一人きりで届けに行って。
招き入れられるまま、部屋に上がったのだと思う。
私は驚いた。
臨月近い妊婦…いや。
正確には、臨月近い妊婦の兄嫁だ。
そんな人間に欲情できるもんなんだな、と。
最低な母親だ。
つくづく、自分をそう思った。
お腹の中に夫の子供がいるのに、ろくに拒むこともせず…夫の弟に抱かれるなんて。