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あなたがそれを望むなら
第1章 目覚めると…
そうしてる間にキッチンからは醤油とみりんのいい香りが漂ってきた。
俺の食欲を掻き立てるようないい香り。

そして、どこか懐かしい香りが…。
あれ?この香りって…。

「お待たせしました」

料理を終えた松野さんが、お盆に料理を乗せて部屋に戻ってきた。
ベッドの下にあるテーブルに料理を置いてくれた。

「あ…」


鯖の醤油煮込み。
お味噌汁に熱々のご飯。
綺麗に盛られたお付けもの。

王道の日本料理と言った献立。

「美味そう…」

俺はその見た目と懐かしい香りに思わずそう溢してしまった。

「あ、いや…、味にそんなに自信はないですよ。田舎料理というか何と言うか…」

田舎料理?
とんでもない。
煮崩れせずに煮込まれた魚に、豆腐とワカメのお味噌汁。
ふわふわに炊かれた米。
俺はその光景に感動すら覚えていた。

「佐伯さんはいつも、もっとお洒落なイタリアンとか食べてるんじゃないんですか?」

…彼女がいたときは見栄を張ってイタリアンやフレンチで食事した事はある。
彼女がいない今は専らコンビニ弁当ばかり。
自炊をしてた時期もあるが途中から面倒臭くなった。

「頂きます」

差し出された箸を使って松野さんが作ってくれた食事を口に運んだ。

「あ、味もそこまで保証出来ないですよ?」
「………」

松野さんの料理を咀嚼する度に、懐かしい何かが込み上げて来て泣きそうになった。
口いっぱいに広がる懐かしい味。


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