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あなたがそれを望むなら
第1章 目覚めると…
それは、子供の頃に食べた母親の味によく似ていた。
俺の母親もよく和食を作ってくれていた。
肉じゃがや魚料理。

社会人になった今は外食に行く機会が増えてわざわざ和食を口にする事もなくなった。
飽食のこの時代、レトルトでも美味しいし、この街にはいろんな料理が溢れている。
接待だ何だで色んな料理を食べてきた。

けど、今は

「さ、佐伯さん?」


どんな高級な三ツ星レストランの料理より最高に美味いと思った。


俺は松野さんの料理を夢中で平らげた。
今にも泣き出しそうな気持ちを堪えながら、母親の事を思い出していた。

「ま、松野さんって料理上手だなぁと思って…」
「そ、そんな…、そんな事ないですよ!」

松野さんの料理は俺の心を軽くした。
日々の仕事で疲れていた俺の心が安らぐ、そんな気がした。

「この煮魚なんてお店で出せるレベルだよ!」
「あ、それは祖母に教えて貰った料理なんです」

祖母って事は、松野さんのおばあちゃんか…。
だからこんなに懐かしい味がするんだな。
おばあさんに料理を教えて貰うって事は、おばあさんと仲が良かったんだな。

「お米の洗い方とか炊き方とか…、結構厳しく仕込まれちゃって。他にも女性としての作法とかいろいろ…」
「へぇ。随分と厳しいおばあさんだったんだね」

昔話をしながら俺の向かい側に座る松野さんだが…

「――――~っ!」

俺は食事を進めながらあることを思い出し再び動揺してしまう。

「佐伯さん?どうかしましたか?」


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