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あなたがそれを望むなら
第2章 失意の中で
「えっと、ゴミの分別を…」

照れ臭そうに笑っているが、それは見ればわかる。
俺が聞いてるのはそんな事じゃない。

「そうじゃなくて、何で松野さんがそんな事を?」

これは清掃業者の仕事で俺達社員がやる仕事じゃない。
どうして松野さんがゴミの分別をしてるかということだ。

「あ、ほら。今、視察期間中じゃないですか?清掃業者の人も大変そうですし手伝おうかと思って…」
「え…?」

視察期間中、本社の人間は会社のあらゆる部分を見ている。
俺達社員だけじゃなく、施設内の汚れなどを隈無くチェックしている。
トイレやロッカー、ゴミの分別など、ネチネチと事細かに…。
社員が如何に自分達の職場を大事にしてるか…、愛社心、忠誠心があるかどうかを見ている。

視察というよりただの粗捜しだ。

この時期だけは清掃業者にも念入りに掃除をしてくれるように頼んである。
こんな広い社内を業者数人だけでは掃除し切れないとは思っていたが

「だからって松野さんがやることは…」
「でも、やっぱり綺麗な会社を見て欲しいじゃないですか」


ニッコリと笑った松野さん。
その表情に濁りはなくまるで掃除を楽しんでるかのようだった。


――――…。



あぁ、まただ。
松野さんの笑顔を見るたびに胸が締め付けられる。
心臓がドキドキして痛い。

松野さんの表情を見ると、何も言えなくなる。

「…ボトルのラベルは俺がやる」
「え?」


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