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あなたがそれを望むなら
第2章 失意の中で
午後の仕事中も、俺の視線は松野さんを追っていた。
が、松野さんの視線が俺の方に向くことはなかった。
俺が一人で勝手に意識して舞い上がってるだけに過ぎない。
松野さんは、俺が今どんな事を考えてるかなんて気にして等いないだろう。
俺が松野さんの魅力に気付き胸を高鳴らせているなんて夢にも思っていないだろう。



そして、やっと今日の仕事が終わった。
いつもと変わらない一日だったのに、俺の体力と気力は限界を越えたかのようにクタクタになっていた。

あー、疲れた…。
今は視察期間中で会社全体がピリピリしている。
何かあれば中堅の俺に責任を擦り付けられる。
その緊張感で胃に穴が空きそうだ。

「あー、やっと視察期間の初日が終わったな~」
「でもあと視察はあと二日あるだろ?マジで勘弁して欲しいよな~…」

愚痴を言いながら同僚達が次々に帰っていく。
同僚達も社内のピリピリ感を肌で感じてるようだ。

全くその通りだ。
この緊張感があと二日も続くのかと思うと憂鬱で仕方ない。
視察期間中、有給でも使って休みたい気分だよ。


でも、会社を休んだら松野さんに会えないな…。

「……っ」

この間まで、松野さんの事なんて何とも思っていなかった。
視界にすら入って来なかった。
なのに今は、松野さんの姿を目で追ってしまうくらい意識し始めてる。
松野さんのそばに行くだけで胸が張り裂けそうになってる。

この緊張感も疲労感も、視察期間中だけのせいじゃない。
松野さんが、俺の心のど真ん中を射抜いたせいだ。

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