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メサイアの灯火
第7章 巡り会い
「ねえソータ、今日遊びに行って良い?」

「今日は乱取り稽古があるから明日だったら良いよ」

 年長組に上がったある土曜日の帰宅直前、帰り支度をしていた蒼太にメリアリアが話し掛けて来た。

 メリアリアは蒼太と少しでも一緒にいたかった、まだハッキリとした自覚はなかったけれどもこの頃から彼に対して恋心を抱いていたのだ。

 とにかく蒼太と一緒にいると毎日が楽しくて心が温かくなって来る。

 少し頼りないけれども優しい所なんかも大好きだったし、それに何気ない仕草や横顔にドキリとすることもあって、そう言うのが一々彼女の胸を焦がして行った。

「だったら今日家に来ない?家に来ればお稽古しなくて済むよ?」

「だめだよ、さぼったらめっちゃ怒られるもん」

「お父さん、怖いの?」

「うん、家のお父さん、怖いんだ、めっちゃ怖いよ?それに兄さん達でも勝てないくらいに強いんだ」

「そうなんだ・・・」

(さみしいな・・・)

 彼に比べて誕生日が三ヶ月以上も早いメリアリアは小さい頃はお姉さんぶることもあった、実際に頭も良くて聞き分けも良い娘だった彼女はだから、普段なら余り無理を言って人を困らせたり、駄々を捏ねたりと言った事はしなかったが、ただし。

「ねえねえ、帰るまで後ろの花壇に行かない?お花さんにお水あげよ?」

「良いよ、ぼくジョーロ持ってくるね」

「一緒に行こ!?」

 蒼太の事となると話は別だった、なんだかんだと理由を付けては彼のことを引きずり回し、同じ時間を共有させようとする。

 幼いながらに責任感もあり快活で明るい性格の彼女の唯一の我が儘が、この幼馴染みの少年だった、本当は寂しがり屋で臆病な所もある自分の、ともすれば頑なな心を開いてくれて、話をキチンと聞いてくれる、そんな蒼太の存在がいつしか幼女の中で大きく膨らんで行ったのだ。

 それも蒼太にしてみれば特別な事などしていない、そう言う意識ではなくてただただ自分に一生懸命向かって来てくれていた、その直向きさも眩しかった。

 だけど。

 真実はそれだけでは無かった、本当は彼と出会えたこと。

 彼と巡り会えたこと。

 それ自体が嬉しくて、どうしようないくらいに愛おしい。

 全身全霊でその喜びに浸っていた彼女が、自身の本心に気が付くのはもう少し先の話。
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