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僕の彼女が堕ちるとき
第2章 賭けと代償
「……そりゃ、いくらなんでも君の思い上がりだ。たとえ結婚して10年経った夫婦だって、お互いにわからないことはいっぱいあるよ。一見、ものすごく仲がよさそうに見えてもね。現に、今日、二子玉川で会った人妻がそうだったし。」
 いけしゃあしゃあと大塚が僕に言った。今日、遅れてきたのはそういう理由だったのか、と僕は改めて、この男の態度に反吐が出そうな気がした。

「悪いけど、朱里はあんたが遊んでるような尻の軽い人妻や女の子とは違うんです。旦那や恋人に隠れて平気で浮気するような異常な人と一緒にしないでもらえますか?」
 僕は完全に頭に血が上って、噛みつくような口調になっていた。

「……君の言い方だと、何だか浮気する人はまともじゃないみたいに聞こえるな。」
「まともじゃないでしょう!」
「そんなことはないよ。浮気なんて誰にでもありうることさ。要はきっかけがあるかどうかだよ。浮気なんかしたことがないって人は、単にきっかけがないんだ。それだけのことだよ。」
 大塚は僕の興奮した口調にもまるで動じずに話を続ける。

「俺はタイやインドを旅してるとき、何人ものバックパッカーの女の子と知り合って寝たよ。いざ二人きりって時になると、大体、どの子も、母国に彼氏がいるとか言い訳するけど、そんなの自分が誰とでも寝るような女じゃないって言いたいだけなんだよ。そんな言い訳、脱がす服が一枚増えた程度のもんで、全然大したことじゃない。それよりも誰かと話したいとか、一人でいたくないとか、他人とコミュニケーションしたい、っていう衝動の方が女の子にとっては、はるかに強いんだ。そういうことの延長線上に、セックスもあるってだけだよ。俺は女の子って、そういうもんだと思ってるけどね。」

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