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僕の彼女が堕ちるとき
第2章 賭けと代償
 大塚の口調は冷静だったが、その妙に醒めた態度は逆に僕を苛立たせた。
「だから! そういうビッチみたいな子と朱里を一緒にしないでくださいよ!」
「……俺は君の願望みたいな女の子像より、自分の経験の方を信じるね。君には悪いけど、西野さんだって、例外じゃない。何かきっかけがあれば、浮気もするさ。」
 僕は大塚のその言葉で完全に冷静さを失ってしまった。
 賢しらぶった顔をして、偉そうに講釈を垂れてくるこのチャラい男にどうしようもない赤っ恥をかかせてやりたい、と思った。

 そして僕は握りつぶすようにして缶ビールの残りを一気にあおると、明らかに危険なことを口にしていた。
「ずいぶんと偉そうに言うじゃないですか。まるで、自分だったら朱里を浮気させられるとでも言ってるように聞こえますけど?」
 
 普段の僕なら、こんな話はとっとと切り上げて部屋に戻っていただろう。だけど、僕は酒の勢いもあって、もう引き返せないところまで踏み込んでしまっていた。
 僕は二本目のビールの缶を開けると、怒りのままに一気に喉に流し込んだ。

「……別にそうは言ってないけど、多分、できると思うよ。西野さんて、そんなに恋愛経験なさそうだし。いろんな人と恋愛してる人だったら、好みがハッキリしているから、僕と合わない人は無理だけど、彼女は多分、君くらいしか男を知らないだろ。それなら、いくらでも落としようはあるから。」

 僕は硬く口を結んで、怒りに震えながら大塚の話を聞いていた。
 落としようはある、などというこの男の言い様が、僕にはどうしても許せなかった。
 まるでこのチャラい男に、僕と朱里の絆を嘲笑されているような気がしたのだ。
 朱里が、僕の朱里が、こんなチャラい男の言いなりになってたまるか。

「まあ、君が西野さんを浮気させてみろと言うなら、いつでも受けて立つよ。これでも、売られたケンカは高値で買う主義なんで。」
「……へえ、上等じゃないですか。」
 僕は笑いを浮かべて、大塚を睨みつけた。

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