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僕の彼女が堕ちるとき
第2章 賭けと代償
「ま、こんなところか。」
 そう言って大塚は笑った。
 朱里がお前なんかを相手にするわけがない、せいぜい吠え面をかきやがれ、と僕は心のなかでほくそ笑んだ。

「おっと、肝心なことを忘れるところだった。勝負の報酬はどうするんだ?」
「何だっていいでしょ、そんなもん。」
 正直、何も考えていなかった僕は適当にお茶を濁そうとしたが、大塚は許さなかった。

「そうはいかない。これは勝負なんだから、真面目に考えろ。……そうだな、君が勝ったら、俺が作る予定のテーラーメイドのスーツオーダーの権利を君にやるよ。30万くらいのやつだ。親がスーツ作れってうるさく言うから、作ることにしたんだけど、それをそっくり君にやるよ。テーラーで採寸してもらって、君のサイズで作ればいい。」
 
 ……何だよ、30万円のオーダースーツって。
 こいつ、二留のうえに金持ちのボンボンかよ、と僕は大塚のことがますます嫌いになった。
 別にスーツなんか欲しくないけど、それが報酬というなら、いただくだけのことだ。


「……で、俺が勝ったら、そのままの流れで西野さんをいただくよ。せっかく苦労を重ねて口説き落として部屋まで連れてきたのに、君にハイ終了って言われたんじゃ、蛇の生殺しだからね。」
 朱里をいただくと言われて、僕は少しだけ怯んだが、そんなことが起こりうるはずがない。

 僕が初めて自分の部屋に朱里を招き入れたときだって、初めて誘いをかけてから二か月近くかかったのだ。もちろん、僕の部屋に来るということはセックスをするということも含まれているわけで、朱里が決心してくれるまで、僕はひたすら誘い続け、待ち続けた。

 恋人の僕でさえそれだけかかったものを、今日初めて会っただけのこのチャラい男が、明日一日でどうにかすることなどできるだろうか?
 
 出来るわけがない。
 ならば、この話を受けたところで結果は同じだ。

「別にいいですよ。そんなことできるわけないし。」
「まあ、やってみるまでさ。俺はそんなに分のない勝負だとは思ってない。」
 そういうと、大塚は僕の方を向いて不敵に笑った。

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