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僕の彼女が堕ちるとき
第2章 賭けと代償
「あ、でも、君としたら俺が適当な話をでっちあげて西野さんを部屋に引っ張り込んで、後は力づくでヤっちゃうかも、って不安も捨てきれないよな?」
 そんなんじゃない。
 そもそも、こいつの家に朱里が行くなどということがあり得ないのだ。

 だが、僕の考えとは関係なく、大塚は言葉を続ける。
「じゃあさ、こうしよう。俺が首尾よく西野さんを口説き落として、西野さんが俺の部屋に来るのが確定的になったら、君に電話を入れるよ。君はそのまま僕の部屋に来て、クロゼットに隠れて隙間から見ていてくれ。俺と西野さんは、そのままセックスすると思うけど、俺が力づくとか、嫌がってるのを無理やりしてると思ったら、止めてもらって構わない。」

 そう言って、大塚は僕に部屋の合鍵を投げてよこした。
 また僕はセックスという言葉に反応しそうになったが、そんなことは絶対にあり得ない。
 あり得ないものに反応したって仕方ない、と僕は自分を押さえる。

「やれやれ、合鍵なんて用意してもらっても、無駄だと思いますけどね。第一、あんたに返しに行く手間が面倒だし。」
「無駄だったかどうかは明日の結果が教えてくれるさ。まあ、楽しみにしてなよ。」
 僕の言葉に大塚はにやりと笑った。

「ああ、それと、俺の部屋に入るときに、あからさまに自分の痕跡を残して、西野さんに感づかせる、って手はナシな。玄関に自分の靴脱いであるとか、ね。ま、そのあたりの注意事項は俺の部屋の住所と一緒に、君にショートメール入れとくから。」
「……だから、そんなの無駄ですって。」

「それは、無駄になってほしいっていう君の願望だろ? 俺は、君の願望に付き合う気はないんだ。必要だと思うことをやるだけさ。」

 大塚の余裕は僕に妙な不安を感じさせたが、その時の僕には、大塚の態度は虚勢以上のものには見えなかった。

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