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僕の彼女が堕ちるとき
第4章 苦すぎたコーヒー
都内に向かう電車の中でも、僕の気持ちは沈んだままだった。
僕としては、朱里はよほど友達と遊びに行きたかったのだろう、と思うしかなかった。
確かに、朱里も僕も4年になってからは、電話でこそ話しているものの、就活やら卒論やらが重なって、一緒に遊びにいったりする機会が減ってはいた。
朱里は、最初からゼネコンと製造業に絞って就職活動をしていた僕とは違い、中学校の教師を目指していた。
僕が就活に励んでいるころ、彼女は教育実習に出ていて、そして、僕がいくつか内定を取り付けて一段落したころ、彼女は東京といくつかの県の教員試験を受けていた。
結局、教員試験はどこもうまくいかず、朱里は9月も半ばになってから、一般企業に志望を変えた。そして、二次募集をかけていた商社の事務職に内定を取りつけたのだが、恐らく、それは朱里にとって納得できる結果ではなかったはずだ。
その間、僕は自分なりに、落ち込んだり、焦ったりしている彼女を励ましてきたつもりだったけど、彼女の鬱憤は僕の想像以上に溜まっていたのだろう。
少なくとも、そう思うしかなかった。
結局、電車のなかでは、それ以上、大塚からの電話はなく、僕は大きなため息をつきながら、見慣れた最寄り駅に降りた。