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僕の彼女が堕ちるとき
第4章 苦すぎたコーヒー
 駅を降りた僕は、自分のアパートに向かって歩いていたが、朱里があの大塚と、温泉に入りながら水着姿で楽しそうにしているところを想像すると、そのまままっすぐに家に帰る気になれなかった。
 
 仕方なく、僕はたまにしか行かない駅前の古びた喫茶店に入った。
 うんと濃いコーヒーでも飲んで、猜疑心と嫉妬でぐちゃぐちゃになった頭を何とかしたかったのだ。
 
 僕はエスプレッソをオーダーすると、ミルクも入れずに、流し込むようにして飲んだ。
 コーヒーの苦みがまるで喉を焼くように感じられて、僕は激しくむせこんだ。
 そして、再び、僕のポケットのスマホが振動した。
 僕はもう、発信者の名前を確認する余裕もなく、急かれるようにして電話に出る。

「よう、お待ちかねの定期連絡だ。大方、そわそわしながら待ってたんだろう?」
 電話の大塚は相変わらず明るい声だ。
 さらには、いちいち余計なことを言ってくるのもカンにさわる。

「別に、そわそわなんかしてませんよ。あいにくだけど。」
「へえ、そのわりには、電話に出るのがえらく速いじゃないか。最初と違って。」
 完全に図星を突かれて、僕は唇をかみしめた。
 大塚に自分の心理状況が筒抜けになっているようで、僕の苛立ちはさらに募る。

「……そんなことはどうでもいい。余計な話はいりませんから、報告だけお願いします。」
 僕は自分の苛立ちを隠すように、声のトーンを下げて、大塚に言った。
「さっき、温泉を出て、今、着換えてるとこだ。着換えたら、女の子たちと電車で都内に戻るよ。当然だけど、戻ったら、新宿でみんなで夕飯にしようって西野さんたちを誘ってある。みんなOKしてくれたから、これから第2ラウンド開始ってとこかな。」
 大塚は相変わらずの明るい声で僕に伝えてきた。

 また、僕の心に黒いシミのように焦慮と嫉妬が広がり、僕は黙りこくってしまった。

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