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僕の彼女が堕ちるとき
第4章 苦すぎたコーヒー
 僕は自分の部屋に戻るなり、部屋の片隅にバッグを放り出した。
 そしてそのままベッドに寝そべって、何をするでもなく天井を見つめていた。
 しばらくそうしていると、僕の中に、また新たな考えが浮かんできた。

 朱里が、僕に大塚のことをあえて知らせない、というのは、そもそもそれほど気に病むことなのだろうか?
 例えば、僕だって就職活動中に、グループ面接なんかで一緒になった連中とは、じゃあ、せっかくだから情報交換も兼ねてご飯でも食べにいこうか、なんてことは何度もあった。
 ご飯で話が盛り上がれば、改めて飲みにいこうとか、カラオケ行こうとか、そういう流れも自然にあった。そのなかに、女の子がただの一人もいなかったか、と聞かれれば、そんなことはないのだ。
 朱里に、就活で知り合った人たちとご飯食べてくる、という程度のメールはするけれど、わざわざそれ以上のことは書かない。だからと言って、そこに悪意があるわけではない。
 
 今回、たまたま僕は、大塚から聞いて朱里の行動を逐一把握している。
 そういう特殊な状況だから、騙されたとか、嘘をつかれたとか、ことさらに悪意の方を感じてしまうのだ。考えてみれば、同じようなことは僕だって、意図せずにやっている。
 僕は、もともとありもしない彼女の悪意を邪推しているだけじゃないのか?
 
 そう思うと、少しだけ僕の心は軽くなった。
 大塚の煽りを真に受けて、自分を見失うな、と僕は自分に言い聞かせた。


 少しだけ落ち着いた僕はTVをつけて、リモコンで適当にチャンネルを回した。
 画面の向こうでは、いつものように情報番組のコメンテーターたちが、したり顔で毒にも薬にもならないコメントを言い合っている。
 だが、それは今の僕とはあまりにも違う世界のように感じられて、僕はイライラしながらTVのスイッチを切った。

 結局、僕はベッドに寝そべったまま、再び、何をするでもなく、天井を眺めていた。
 そして、再び、ポケットのスマホが振動した。

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