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僕の彼女が堕ちるとき
第5章 揺れる想い
僕は混乱した頭を抱えて、しばらくベッドにうずくまっていた。
そりゃ僕だって、朱里が教員試験に受からなくて、落ち込んでいたのは知っている。
だが、その間だって、僕はずっと朱里を励まし続けてきたつもりだった。
今、朱里が内定している商社の事務職だって、僕が就職活動で得た友達のコネクションを総動員して、何とか見つけてきたところなのだ。そうでもしなければ、9月も半ばを過ぎて、まだ新卒の募集をしてるところなんて見つかりようがない。
だからこそ、彼女にとって本命ではないとはいえ、内定が決まったとき、僕は自分のことのようにうれしかった。
僕にしたって、周りに高望みだと言われつつも、大手のゼネコンを志望したのは、半分は朱里と結婚して幸せな未来を作るためだった。そのことを願えばこそ、無理も高望みもしてきたのだ。
だけど、それが朱里を苦しめていたなんて、僕にはとても信じられなかった。
僕は熱くなった頭を冷やそうと、ベランダの窓を開けた。
もう外は完全に暗くなっていて、高台にある僕のアパートからは、都心のビル群の光が見えた。
あの光の中のどこかに、朱里もいるのだろうか。
そう思うと、僕の中を激しい焦燥が走りぬけ、こんなところでぼんやりしていていいのか、という気になってくる。
だが、今の僕に、一体、何ができるのだろう。
そして、また、僕のなかに、朱里の顔が浮かんだ。
初めて僕の部屋で求めあった後の顔だ。
「これからも今日のことを思い出すときは、颯太とエッチした後がいいな。」
そう言ってくれたときの朱里の笑顔に、偽りはなかったはずだ。
僕はその甘い思い出にすがるように、ひたすら朱里の笑顔を反芻しつづけた。