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僕の彼女が堕ちるとき
第5章 揺れる想い
「昨日は、俺が無理やり西野さんを押し倒したりしないか、クロゼットのなかで見てればいいって言ったが、君は本当に、クロゼットの中で黙って俺と西野さんがセックスするのを見ていられるのか? その自信がないんだったら、今のうちに部屋を出て行ってくれ。こっちとしたら、ヤッてる最中に泣きわめかれたり、ブチ切れて怒鳴り散らされたりしたら、興ざめもいいところだからな。勝負の結果はメールで教えてやるよ。改めて言うが、俺の部屋まで西野さんがきたら俺の勝ち。マンションの玄関先で帰ったら君の勝ちだ。」

「今さら、そんな確認、しなくていい!」
 僕は大塚の言葉を遮って声を荒げた。

「やれやれ、そんな調子じゃ、どのみち帰った方がいいな。決心がつかないなら少し時間をやるよ。今、9時45分だから、10時までに決断してくれ。こっちはそれに合わせて10時にカフェを出ることにする。ま、俺が西野さんとヤレるかどうかは、君にとっては大問題だろうが、俺にとっては報酬をいただくってだけのことだ。君にしても、彼女が他人に抱かれるところなんて、見たくないだろう? これは好意で言ってるんだ。これでも俺の、君に対する持ち合わせの半分は好意なんだぜ。」
「じゃあ、もう半分は何なんだよ!」

「……寝取り願望だよ。君がひたすら大事に想っている綺麗な西野さんを、君の目の前で犯りまくって、息が出来なくなるくらいにイカせて、君を心の底から絶望させたい。」
「ふざけんな!」
 僕は電話に向けて怒鳴ったが、大塚はまるで怯まない。

「だから、こっちが好意を優先してるうちに、帰ってくれと言ってるんだよ。嫉妬と絶望で心を焼かれて、一生、トラウマになるようなものを見せられたくなかったら、な。」
 大塚は最後に冷たい声でそう言い、電話を切った。
 すでに、スマホの時計は9時49分になろうとしていた。

 だが、朱里への連絡さえも封じられた今、僕が取りうる選択は2つしかない。
 ここに残って絶望を見届けるか。
 ここから出て、絶望に目を背けて逃げるか。

 そして、その不毛な二択のタイムリミットは目前に迫っていた。

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