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僕の彼女が堕ちるとき
第6章 見えない心、違えた道
それに、よくよく考えると大塚の言葉もおかしく思える。
わざわざ僕を自分の部屋に来させたくせに、今になって帰れというのは何故なのだろう?
もちろん、ヤッてる最中に邪魔が入るのは嫌だ、という大塚の理屈はわかる。
けれどそんなことは最初から分かっていたことで、今になってわざわざ言い出すというのが妙なのだ。
もともと、大塚は口で言うほど、この勝負に勝ち目など感じていなかったのではないか?
ところが、朱里と話すうちに、例の簿記の教材のことを思いついた。
それをダシにして、朱里を部屋におびき寄せることができると踏んだ。
大塚は朱里が部屋まできたら、問答無用で押し倒す気なのではないか?
それを僕に邪魔されたくないのではないか?
そうだとすれば、急に帰れと言い出したことにも、合点がいく。
さらに大塚は、もう八割方落ちたみたいなことを言っていたが、それがわかる具体的な根拠は何もない。大塚のいかにももっともらしい話と、朱里がスマホの電源を落としたということだけだ。
朱里にスマホの電源を切るように勧めた、という大塚の話が、そもそも怪しくないか?
昨日から充電してないなら、電池が切れかかっているのは当然で、大塚はたまたま朱里が僕にメールするのを見かけて、僕を動揺させるために、さも自分が主導したかのように言っているだけではないのか?
……それならば。
むしろ、僕はこのクロゼットで待ち受けて、大塚が朱里を押し倒すのを止めるべきだ。
あいつはそこまで自信があるわけではないのだ。
だからこそ、僕にここに居てほしくないのだ。
僕はそう読んだ。
大塚の言うリミットのぎりぎりで僕の気持ちはようやく固まった。
だが、僕はもうリミットなど信じていない。
それこそがあいつのブラフに違いない。
そして、大塚の部屋の壁掛け時計が10時を差した。
僕は部屋の明かりを消すと、再びクロゼットの中にもぐりこんだ。
わざわざ僕を自分の部屋に来させたくせに、今になって帰れというのは何故なのだろう?
もちろん、ヤッてる最中に邪魔が入るのは嫌だ、という大塚の理屈はわかる。
けれどそんなことは最初から分かっていたことで、今になってわざわざ言い出すというのが妙なのだ。
もともと、大塚は口で言うほど、この勝負に勝ち目など感じていなかったのではないか?
ところが、朱里と話すうちに、例の簿記の教材のことを思いついた。
それをダシにして、朱里を部屋におびき寄せることができると踏んだ。
大塚は朱里が部屋まできたら、問答無用で押し倒す気なのではないか?
それを僕に邪魔されたくないのではないか?
そうだとすれば、急に帰れと言い出したことにも、合点がいく。
さらに大塚は、もう八割方落ちたみたいなことを言っていたが、それがわかる具体的な根拠は何もない。大塚のいかにももっともらしい話と、朱里がスマホの電源を落としたということだけだ。
朱里にスマホの電源を切るように勧めた、という大塚の話が、そもそも怪しくないか?
昨日から充電してないなら、電池が切れかかっているのは当然で、大塚はたまたま朱里が僕にメールするのを見かけて、僕を動揺させるために、さも自分が主導したかのように言っているだけではないのか?
……それならば。
むしろ、僕はこのクロゼットで待ち受けて、大塚が朱里を押し倒すのを止めるべきだ。
あいつはそこまで自信があるわけではないのだ。
だからこそ、僕にここに居てほしくないのだ。
僕はそう読んだ。
大塚の言うリミットのぎりぎりで僕の気持ちはようやく固まった。
だが、僕はもうリミットなど信じていない。
それこそがあいつのブラフに違いない。
そして、大塚の部屋の壁掛け時計が10時を差した。
僕は部屋の明かりを消すと、再びクロゼットの中にもぐりこんだ。