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僕の彼女が堕ちるとき
第6章 見えない心、違えた道
「えーと、西野さんはコーヒーでいいかな。紅茶も煎茶もあるけど。」
 大塚は朱里をテーブルの前に座らせると、明るい声で聞いてくる。
「いえ、そんな長居するつもりないんで、お気遣いなく。」
「まあ、まあ、そう言わずにお茶くらい飲んでいってよ。」
 大塚は朱里の遠慮を強引に押し切ると、キッチンに向かった。そのままお盆にポットとマグカップとドリッパーを乗せて、テーブルに運んでくる。こいつ、マグカップの中に、目薬でも垂らしてるんじゃないのか、と僕は疑ったが、そうなれば、僕がこのクロゼットから飛び出して止めるだけだ。

「でも、大塚さんっておっきな部屋に住んでるんですね。これ、キッチンとか書斎とか、別にあるんですよね?……いいなあ。」
 そう言って、朱里が感心したように広い部屋の中を見渡す。

「こんなの、親父に言われて住まわされてるだけだよ。この部屋、全然買い手がつかないらしくてさ。空部屋にしとくのももったいないから、お前が住め、って言われてね。別に俺は4畳半の畳の部屋で良いんだけど。ま、どうせ卒業したら家業を継がされるんだし、このくらいは迷惑料かな。」
 朱里と話しながら、大塚は手際よくマグカップにドリッパーを乗せてコーヒーを淹れた。

 多分、普段から大塚はこの部屋に人妻やら遊び相手の女の子やらを引っ張り込んで、同じようなことを話しているのだろう。僕は反吐が出そうな気分でスリット越しに大塚を睨みつけていた。

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