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僕の彼女が堕ちるとき
第6章 見えない心、違えた道
「でも、大塚さんって、遊んでるようにしか見えないけど、意外としっかりしてますよね。卒論もすごいの書いてきたし。」
「まあ、俺だって、2留したとはいえ、何年も大学に通ってたんだし、なんでもいいから在学中に、自分自身でやり遂げたって納得できるものを手に入れたかったんだよ。あの卒論は、そんだけのことさ。」
「……いいですよね。そういう考え方。」

 朱里が大塚のことを褒めているのは、僕にとって苦痛でしかないが、当の朱里にとってみれば、そこは簿記の教材を譲ってもらう上での社交辞令なのだろう。

「西野さんだって、大学に通ってる間にいろいろ手に入れたでしょ。いい彼氏とか内定先とかさ。俺みたく、強制的に親の後を継がせられる身でもないだろうし、それをいいことにプラプラ遊んでたわけでもないだろうし。」
「……そうですね。結婚相手になる彼氏がいて就職先も決まった。多分、普通の女の子が欲しがるものは手に入れた……ってことなんでしょうね、わたし。」
 コーヒーを飲みながら、朱里は自分に言い聞かせるように言い、大塚に微笑んだ。
 僕は朱里の笑顔を見ながら、感激に震えた。

「やれやれ、ごちそーさん。じゃあ、簿記の教材持ってくるから、ちょっと待っててね。」
 そういうと大塚は隣の部屋に行ってしまった。

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