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僕の彼女が堕ちるとき
第6章 見えない心、違えた道
 やがて、隣の部屋から大塚が紙袋を抱えて戻ってきた。
「ええと、こっちが教本ね。こっちで、大体の流れはわかるから、まず、こっちをざっと読んでみて。で、そっちが仕訳と決算の問題集。まあ、算数のドリルみたいなもんだね。仕訳ができるようになれば、事務レベルの簿記とか、八割方押さえたようなもんだから。今から勉強すれば、入社までに3級くらいとれるんじゃないかな。せっかくだし、そっちも目指してみれば?」

「わあ、ありがとうございます! これで勉強して、あのむかつく人事の人に文句を言われないようにしてみせますから!」
 明るい声で朱里が言った。
 そして、大塚は再び紙袋に簿記の教材を詰めると、朱里の前に差し出した。


「はい、じゃあ、これあげる……って渡したいところなんだけど、本当にこれ、渡しちゃっていいの?」
「……え? どういうことですか?」
 大塚の問いに朱里は怪訝そうに返す。

「俺は、会社で使うから簿記の勉強をしてたけど、西野さんがやりたいことってこれなの? 西野さんには、他にもっとやりたいことがあるんじゃないの?」
 大塚はゆっくりと、だが、問い詰めるように朱里に聞いた。

「教職のことですか?……だって、あれはもう全滅した時点であきらめましたもん。今は気持ちを切り替えて、内定もらったところでがんばるつもりですよ。」
 朱里が苦笑いを浮かべて、手を振る。

「そうしないと、いろいろ骨を折ってくれた彼氏に申し訳ない……と思う?」
 朱里が笑って済ませようとしたところへ、大塚はさらに切り込んだ。
 朱里の顔から愛想笑いが消え、目の色が怒りに変わった。

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