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僕の彼女が堕ちるとき
第6章 見えない心、違えた道
「何もいけなくないよ。だけど、本当はそうじゃない。本当に、そう思っていたら、君はこの部屋に来ていない。多分、君は、今の自分自身に救いを求めて、ここへ来た。」
「…………」
 まるで雷に打たれたように朱里が固まり、口をつぐんだ。

「今の君は多分、劣等感で身動きが取れなくなってる。本当はやりたいことがあるのに、自分はダメな人間だから、って思いこんで、やりたいことから目を背けてるんだ。そして、まずいことに今の君は、そのことを相談できる相手もいない。」
「……そんなことは……」
 朱里は大塚の言葉を否定しようとしたが、それはあまりにも小さな声で、大塚は構わず言葉を続ける。

「彼氏には結婚もちらつかされてるし、内定先の会社を紹介してくれた手前もあるから、本当の気持ちは言えない。だけど、とりあえず内定は取って就職はできた。それに、彼氏はいいところに内定した優良物件だ。その彼氏に結婚まで意識させてて、今さら何が不満なんだ、としか君の周りは思ってない。下手すりゃ、君の親御さんもね。君からすれば、誰にも相談なんか出来ないだろうよ。」
「…………」

「でも、一番の問題は君が周りの空気に流されて、自分は今の状況に納得してるんだって思い込もうとしていることだ。流されるまま、他人に人生を預けて、それをしようがないって思い込もうとしている。少なくとも、俺にはそう見えるね。」

「……だったら!……だったら!……どうすればいいんですか! わたしは!」
「それを話したくて、君はここに来たんじゃないのか? 俺みたいな1日かそこら会っただけの男の部屋に。」
「……うああっ……」
 そして、朱里はそのまま大塚にすがりつくと、堰を切ったように激しく泣き出した。

 それは僕にとって、絶望的なまでに胸が苦しくなる光景だったが、僕は声をあげることも、動くこともできなかった。僕はひたすら唇を噛みしめ、手を拳に固めながら、長い間、大塚の胸の中で泣き続ける朱里を見続けていた。

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