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僕の彼女が堕ちるとき
第7章 エンドレス・ボレロ
 悪夢のような長いキスが終わって、大塚が唇を離した後も、朱里は黙ったままだった。
 抱き合って目を潤ませたまま、上目遣いで大塚を見つめている。
「……ここから先は、「勢い」ではしたくない。君自身が望むことを、俺に教えて欲しいな。聖書にもあるだろ。「求めよ、されば与えられん」ってね。」
 大塚が朱里の顎に手を置いて、手の平で包むようにして弄ぶ。
 
 そんなことを、僕の目の前で、朱里に言わせようというのか?
 もしかして、無理やりじゃない、というのをそんな形で証明しようというのか?
 だけど、僕の問いかけは口に出ることもなく、空しく闇の中に消えた。
 僕の目から涙が溢れ、視界が歪んでまともに二人が見えない。


「……大塚さんは……わたしを……壊してくれますか?」
 しばらくの沈黙の後、朱里は大塚の顔を見上げながら、そう言った。
「君は、壊されたいの? ……それが君の望み?」
 大塚の問いに朱里はうつむいて、小さく頷いた。

「……何も考えられなくなるくらい……わたしを……わたしをめちゃくちゃに……犯して……壊してください。……そうすれば、わたし……少しだけ変われると思うから……。」
 朱里はうつむいたまま、大塚にそう言い、胸に顔をうずめる。
 そして大塚に勝ち誇ったような笑みが浮かんだ。
 
 その朱里の言葉と、大塚の笑いは、僕から何もかもを奪ってしまった。

 僕がこのクロゼットにいる意味も。
 この賭けで、僕が守ろうとした朱里の恋人としてのプライドも。
 そして、朱里と一緒に歩いていくはずだった将来さえも。

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