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カゴノトリ
第1章 部屋の前
急に、ぴちゃ、ぴちゃ、という舌を使って、何か液体をすくい取る音が、断続的に聞こえ始めた。

「いやっ、やめっ、あっ……いやっ……いやっ!」

また美保の声だ。

姉ちゃんは嫌がって……いる……のだろうか? 

それとも……。

卓也は目を固く閉じた。

ずずっ、ずずっ……。

唇が、液体と空気を一緒に吸い上げる音だ。

「はあぁ、はあぁ…」

剛三の荒い息だった。

ずずっ、ずずっ、という音が途切れると、はあぁ、はあぁ、という息遣いが聞こえる。

粘着質な音と、空気が擦れる音と、荒い息使いが続く。

その間に、美保の泣きそうな声が漏れてくる。

すべて部屋の中にいる二人の口から、発せられる音だった。

姉ちゃん……。

卓也は、下唇を噛みしめた。

姉ちゃんはどんな格好しているんだ……?

ああ……どんなことを、されているんだ……?
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