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スカーレット オーク
第5章 5 約束
緋紗のお目当てである陶芸部門に到着した。
緋紗が緋だすきの大きな皿を眺めていると大友も一緒に覗き込む。
「綺麗な緋色」
ため息交じりに見ていると、「この赤いラインは模様?」と、大友が訊ねるので得意そうにレクチャーした。
「緋だすきというのは備前焼の景色の中の一つなんです。
藁(わら)をたすき掛けにして窯の中に入れるんですけど、もともとは焼き物同士がくっつかないようにする方法で模様として珍重されるのはずっと後のことみたいです」
大友が腰をかがめて緋紗の耳元に囁く。
「昨日のひさちゃんの手首のようだね」
「なっ!」
耳まで真っ赤にしている緋紗に大友は薄く笑んだ。
「大友さんお茶しませんか?」
館内のカフェに緋紗は誘う。
「とても楽しかったよ」
「伝統工芸もいいものでしょ」
緋紗はさっきのアクシデントはなかったことにして満足げに言う。
「うーん。昨日から全部ね。いい日になった」
大友の言葉に顔を赤らめっぱなしだ。――この人こんな平気そうな顔で。
反応に困っていると、「また会える?」 と、大友が尋ねる。
「え?」
思ってもみなかった言葉に緋紗は聞き間違えたのかと思った。
「無理には言わないよ」
『会いません』なんて昨晩のことを思うと抵抗できるはずがなかった。
いつ、どこで、どうやって会えばいいのかわからないまま緋紗は、「会いたいです」 と、答えてしまう。
大友はスケジュール帳を取り出した。
「僕は来月末にまたこっち方面、広島だけど来るんだ。やっぱり仕事がらみだけどね」
――来月末……。
「土曜の夜なら。広島のどこですか?広島市?」
「いや三次市というところなんだ」
「岡山に七時には到着できると思うけど。備前市まで行こうか?泊まるとこあるかな」
「一応ありますけど。ちょっと田舎過ぎるので私が岡山まで出てきます」
――備前で人に見られたらすぐ噂になっちゃうよ。
緋紗が緋だすきの大きな皿を眺めていると大友も一緒に覗き込む。
「綺麗な緋色」
ため息交じりに見ていると、「この赤いラインは模様?」と、大友が訊ねるので得意そうにレクチャーした。
「緋だすきというのは備前焼の景色の中の一つなんです。
藁(わら)をたすき掛けにして窯の中に入れるんですけど、もともとは焼き物同士がくっつかないようにする方法で模様として珍重されるのはずっと後のことみたいです」
大友が腰をかがめて緋紗の耳元に囁く。
「昨日のひさちゃんの手首のようだね」
「なっ!」
耳まで真っ赤にしている緋紗に大友は薄く笑んだ。
「大友さんお茶しませんか?」
館内のカフェに緋紗は誘う。
「とても楽しかったよ」
「伝統工芸もいいものでしょ」
緋紗はさっきのアクシデントはなかったことにして満足げに言う。
「うーん。昨日から全部ね。いい日になった」
大友の言葉に顔を赤らめっぱなしだ。――この人こんな平気そうな顔で。
反応に困っていると、「また会える?」 と、大友が尋ねる。
「え?」
思ってもみなかった言葉に緋紗は聞き間違えたのかと思った。
「無理には言わないよ」
『会いません』なんて昨晩のことを思うと抵抗できるはずがなかった。
いつ、どこで、どうやって会えばいいのかわからないまま緋紗は、「会いたいです」 と、答えてしまう。
大友はスケジュール帳を取り出した。
「僕は来月末にまたこっち方面、広島だけど来るんだ。やっぱり仕事がらみだけどね」
――来月末……。
「土曜の夜なら。広島のどこですか?広島市?」
「いや三次市というところなんだ」
「岡山に七時には到着できると思うけど。備前市まで行こうか?泊まるとこあるかな」
「一応ありますけど。ちょっと田舎過ぎるので私が岡山まで出てきます」
――備前で人に見られたらすぐ噂になっちゃうよ。