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スカーレット オーク
第6章 6 大友家
「続き話せよ」

 母と娘が去った途端に颯介は急かす。

「えーっと。なんだっけ」
「バーだよ、バー」
 ――……。

「なんとなく話が盛り上がって次の日会う約束をしたんだ」
「バーに行くなんて珍しいわね」
「うん。いつもならすぐホテルに直行するんだけどね。講習会で知り合った人に岡山市に泊まるって言ったらオペラのチケットをくれてね」
「オペラ~?」

 颯介と早苗が同時に発する。
小柄な颯介と大柄な早苗がハモるとちょっとしたオペレッタのようだ。

「なに、なに観たの?」
「そんなの何でもいいよ」
「カルメン。結構いい席で迫力があったから楽しめたよ」

 隣の席にいたのが緋紗だとは話さなかった。

「オペラの話はまた今度にしようぜ」
「そうね」
「んー、で。美術館でデートした」
「美術館か」
「どんな人なの?」
 
 直樹は努めて冷静に緋紗の特徴を話した。

「ボーッィシュな感じの子で陶芸家の弟子をしてるらしい」
「へー。なんか変わってそうだな」
「で、どうするのこれから?」
「一応来月末に、広島に行くからまた岡山でご飯でも食べようと約束したよ」
「番号ちゃんと聞いたか?」
「ああ聞かなかった」
「えー!」
「おいおい」
「名刺渡しといた」

 颯介と早苗は『こりゃだめだ』というように顔を見合わせ、勝手に納得したらしくそれ以上突っ込まなかった。
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