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スカーレット オーク
第2章 2 バー『コリンズ』

いつも座るカウンターにするっと滑り込むと隣に男が座っていた。
バーは淡いブルーとグリーンのライトでカウンター内の酒類が照らされていて薄暗く、ボックス席二つとカウンター席六つのみで、こじんまりとしているが、せまっ苦しい感じはない。
隣の男はグレーっぽいスーツで静かに飲んでいたので、不注意な緋紗は座って初めてその存在に気付いたのだった。
今のところ客は緋紗とその男だけで、席は空いているにもかかわらず不用意に並んで座ってしまった。心の中で(しまった)と思ったがそこで立ち上がって席を移動するのも気まずく、
「こんばんは」
と、声をかけて気にしないふりをする。
隣の男は少し身体を緋紗のほうに動かして落ち着いた声で、
「こんばんは」
と返す。
声と動いた時の香りにはっとする。――あれ?どこかでおんなじことがあったような気がする……。
男の顔をみないままマスターに、
「マティーニお願いします」
と注文した。
「今日はどこか行った帰り?」
「オペラでカルメン観てきたんです。生の歌声ってめっちゃ感動しましたよー」
「ああ、それで正装してるんだね。一瞬、誰かわからなかったよ」
「あはは。こんな恰好結婚式以外しないよね」
マスターが笑いながら、どっしりとしたビーカーに氷とベルモットとジンを注いでマドラーをくるくる回している。
その手つきを眺めている緋紗に隣の男が声をかけてきた。
バーは淡いブルーとグリーンのライトでカウンター内の酒類が照らされていて薄暗く、ボックス席二つとカウンター席六つのみで、こじんまりとしているが、せまっ苦しい感じはない。
隣の男はグレーっぽいスーツで静かに飲んでいたので、不注意な緋紗は座って初めてその存在に気付いたのだった。
今のところ客は緋紗とその男だけで、席は空いているにもかかわらず不用意に並んで座ってしまった。心の中で(しまった)と思ったがそこで立ち上がって席を移動するのも気まずく、
「こんばんは」
と、声をかけて気にしないふりをする。
隣の男は少し身体を緋紗のほうに動かして落ち着いた声で、
「こんばんは」
と返す。
声と動いた時の香りにはっとする。――あれ?どこかでおんなじことがあったような気がする……。
男の顔をみないままマスターに、
「マティーニお願いします」
と注文した。
「今日はどこか行った帰り?」
「オペラでカルメン観てきたんです。生の歌声ってめっちゃ感動しましたよー」
「ああ、それで正装してるんだね。一瞬、誰かわからなかったよ」
「あはは。こんな恰好結婚式以外しないよね」
マスターが笑いながら、どっしりとしたビーカーに氷とベルモットとジンを注いでマドラーをくるくる回している。
その手つきを眺めている緋紗に隣の男が声をかけてきた。

