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スカーレット オーク
第2章 2 バー『コリンズ』
「さっきも隣の席でしたよね」
「え」
 そう言われて思い出した。――私の足が邪魔になった人?
 ここで初めて緋紗は男の顔を見た。
右手の甲に顎を乗せ左手で銀のフレームの眼鏡をかけ直している。
涼しそうな目元。――ここらへんの人ではないよね。
 マスターの丸くて人懐っこい目と比較して見た。

「ホセって熱いですよね」
 緋紗は思ったことをぼんやりと返す。
「お待たせ」
 きりっと冷えたマティーニが差し出され緋紗は一口飲んでからピンに刺さったオリーブをかじる。
彼女は一杯を飲んでしまうと気持ちが朗らかになりおしゃべりになった。
「もしかしてマティーニ飲んでます?美味しいですよねー。私はカクテルの中で一番好きなんです。オリーブも美味しいし」
 機嫌よく男に話しかけると男も微笑を浮かべて静かに話す。
「そうですね。僕も香りが爽やかで飲みやすいからショートはこれくらいしか飲まないですよ。あまりカクテルには詳しくないしね」

 カラカランとベルが何度か鳴り二人きりだった店にも何人か客が入り賑やかになってくる。
緋紗がもう一杯マティーニを頼むと男はジントニックを頼んだ。
ぽつりぽつりと話すことに緋紗はなんだかリラックスして気分がよくなってくる。
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