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Backside storys
第1章 小鳥遊 真紀
「…彼と、別れてん…」
井上くんは、なんも言わんかった。
「…不倫、やってん…」
結構な沈黙の後、
「小鳥遊さん、あの、とりあえず、ここ、出ませんか。もうすぐ巡回も来るし。警備員に見つかったらややこしそうだし。」
と、提案される。もうそんな時間か…と思いながら腕時計を見ると、確かに8時55分…
出た方がえぇかな…
と、のろのろと支度をする。
井上くんの後についてエレベーターに乗り、会社のビルを出た。
俯いたまま、井上くんに手を引かれて歩く。
しばらく歩いて、寒さに思わずくしゃみが出た。持ったままのハンカチで鼻を拭く。
しかし…何処行く気やろか…
当てもなく歩いてるんか、何か当てがあって歩いてるんか、さっきから路地に出たり入ったり…結構歩いたで…と思いながらあたりを見る。え?ちょっと待って…この辺て…
「ちょっと待って。
―――ホテル行こうとしてへん?」
ナニ? ホテル探してたん?
え?話するだけやないの?井上くんの意図を測りかねて立ち止まった私に、
「スミマセン。でも、 ココなら、思い切り泣いても、外に声、漏れませんし。俺、誰にも言いませんし。朝まで付き合いますから。
思いっきり、泣いていいですよ」
予想外の言葉がかけられた。