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Backside storys
第1章 小鳥遊 真紀
って、井上くんを論破してどうすんの、と自分で自分に突っ込む。
その時、ピザが届いた。
微妙な空気を変えようと、箱を開ける。井上くんのお腹がグゥー、となって、恥ずかしそうにしてるから、私も早よ食べよ、とピザにかぶり付いた。

ここ数日、食欲なんてなかったのに、話して吹っ切れたんか、やたらとピザが美味しくて。
ぱくぱく進む。サイドメニューのポテトとチキンも食べた。もぐもぐとポテトを咀嚼しながら、ふと井上くんを見ると、ピザを食べる手が止まってて、そのキレイな顔に、涙がひと筋流れる。

「井上くん…?なんで、泣いてんの…?」

「スミマセン…なんか、ちょっと自分と重なってっていうか。いや、俺は騙されたわけじゃないんですけど。俺も、前に失恋したから。」

「そうなん?…井上くんぐらい男前やったら、女のコが放っとかへんと思ってた。」

「そんなことないですよ。彼女に至らない女友達作るのは、得意なんですけどね。本命には、素直に向き合えないっていうか。要するにガキなんです。大阪に配属された時から好きだったヒトが、居て…」

井上くんが、ぽつりぽつりと話し出した。
井上くんの話は、片想いのコに告白する前に、そのコが社内結婚してしまった、と言う内容で。年に数回発行される社内報で掲載されてるカップルのうちのひと組、て事なんやろう…
けど、失恋しても変わらずその人達と仕事で絡まなあかん、ていうのは…ちょっと厳しいモンがある、よなぁ…

それにしても…あかん、なんなんその顔…めっちゃ母性本能擽られるんやけど…このコ、素でコレなんやろうか…コレでモテんとかありえへん、ホント…本社のオンナに母性本能はないのか?それとも皆の共有財産的な感じで誰かが牽制しとったんやろか…なんて考えながら。

「井上くんのおかげで元気出たから。埋め合わせは、するよ?」

オトコの人とホテルに入る、覚悟ができてない訳がない。それに、ホンマに心が軽くなったから…
井上くんも、心に秘めた辛い気持ちがあるなら、ここで吐き出せばいい…そう、思った…
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