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Backside storys
第3章 龍沢 玲司
音沙汰のなかった娘が、10年後、いきなり3歳くらいの幼児を連れてふらりと帰ってくる。
つまり、それが俺。 
父親は、別れたのかそもそも結婚してないのか、何も言わず、もしかしたら彼女自身も相手を特定出来ていなかった可能性もある…つまり、わからずじまいだ。

恐らく奔放な生活の末に身籠った、それでも、おろしもせずに1人で生み、虐待もせず、3歳までは育てた。けど、それが限度だった。

もう、無理。
私、ひとりになりたい。その子とずっと一緒にいたら、私きっと近いうちに心中するわ。

そんなひと言だけ残して、俺を置いて消えたそうだ。
荷物には、きっちりと書き込まれた母子手帳、予防接種の類も、公費助成の範囲内ではあったがしっかりと受けていたそうで、表向きは、シングルなのにきっちりと子育て出来ている、という体裁を整えていた。何事も、他所様から見て、恥ずかしくないように、きちんと出来ていると評価されるように。それだけを追い求めた結果あの子はそういうフリが、できるようになった。そうやって赤子を1人で育てたんだろう。ただ、そんな生活に、あの子の心は相当疲弊していたんだ。そうしてしまった一端はワシにある。だから、ワシは、あの子の代わりにお前を育てる責任がある…
それが、今のワシにできるせめてもの償いだ…と、爺さんは泣きそうな声で呟いた。
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