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Backside storys
第3章 龍沢 玲司
蔵人になりたい、と思ったのは、中学生くらいの時か。
見学以来、自分なりに調べて、蔵元に就職するのが一番かな、と思って、爺さんに相談した。
自分は吞んだこともないのに、いきなり酒を作りたい、と言い出した俺に、本気か?と爺さんは首を傾げた。
「爺さんが、いっつも旨そうに呑んでるから、きっと旨いモンなんだろうと思って。自分の作ったモノで、ヒトが笑顔になるの、見てみたいな、って思うんだけど…それってそんなおかしいことかな…」
爺さんはいいや、と首を振って、いい夢だ、と笑った。
「爺さんが生きてるうちに、呑んだことないくらい美味いヤツ持ってきてやるよ。」
「若造が!ワシはあと30年は生きるからな!しっかり一人前になって美味い酒下げて帰って来い!」
俺は地元の高校を卒業し、新潟の蔵元に就職することになった。
新潟に行く、と言ったら、初めて爺さんは怪訝な顔をして。
灘じゃないんか…と呟いた。新潟か…遠いな…と。
灘が、ダメだったわけじゃない。蔵元は灘だけでなく、県内にいくつもあったし、京都とか、比較的近い近県にもあった。ただ、近いと里心がついて、帰りたい、ってなるんじゃないか、と思って、物理的に距離を置こう、と思ったのと、幾つか話を聞いた中で、昔ながらの製法に拘ってる姿勢がカッコいい、と思って、間宮酒造にお世話になることを決めた。
見学以来、自分なりに調べて、蔵元に就職するのが一番かな、と思って、爺さんに相談した。
自分は吞んだこともないのに、いきなり酒を作りたい、と言い出した俺に、本気か?と爺さんは首を傾げた。
「爺さんが、いっつも旨そうに呑んでるから、きっと旨いモンなんだろうと思って。自分の作ったモノで、ヒトが笑顔になるの、見てみたいな、って思うんだけど…それってそんなおかしいことかな…」
爺さんはいいや、と首を振って、いい夢だ、と笑った。
「爺さんが生きてるうちに、呑んだことないくらい美味いヤツ持ってきてやるよ。」
「若造が!ワシはあと30年は生きるからな!しっかり一人前になって美味い酒下げて帰って来い!」
俺は地元の高校を卒業し、新潟の蔵元に就職することになった。
新潟に行く、と言ったら、初めて爺さんは怪訝な顔をして。
灘じゃないんか…と呟いた。新潟か…遠いな…と。
灘が、ダメだったわけじゃない。蔵元は灘だけでなく、県内にいくつもあったし、京都とか、比較的近い近県にもあった。ただ、近いと里心がついて、帰りたい、ってなるんじゃないか、と思って、物理的に距離を置こう、と思ったのと、幾つか話を聞いた中で、昔ながらの製法に拘ってる姿勢がカッコいい、と思って、間宮酒造にお世話になることを決めた。