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Backside storys
第3章 龍沢 玲司
閑散期にはまだ入ってなかったが、休みを貰い、兵庫に帰った。

爺さんは、前立腺癌、骨にも転移してて、手術しても取り切ることは難しいくらい進行していた。

「あと30年生きるんじゃなかったのかよ」

「…生きる、つもりだったんだけどなぁ…」

「俺が!一人前の職人なったら美味い酒呑ませてやるって言っただろ!」

「持って来てくれたじゃないか。」

発送準備をしてた酒をそのまま下げて帰ってきたけど、多分呑めないだろうとは思いながらどうしたらいいか分からず、そのまま持ってきてた。

5合瓶を2本、風呂敷で包んだヤツをそのまま病室のベッドサイドに置いて。

「早くコレが呑めるように元気にならにゃあなぁ…」

「そうだよ。隠れて呑むなよ、ちゃんと退院してから呑むんだぞ。俺一旦家に持って帰るから。」

「…そのまま、置いといてくれ。お前の仕事を、ここで見ていたい。」

「こんなん、俺の仕事じゃないよ。俺はまだ掃除しかしてないもん。どの工程も触ってもない。」

「…掃除だって立派な仕事だよ。掃除して、きれいな状態だから良いモノが作れるんだろ…」

「…………」

「ありがとうなぁ…玲司…仕事は楽しい、面白いことばっかりじゃない。辛いことも、しんどいことも多い。寧ろ、そっちの方が多いかも知れん。でも、腐るな。ひとつの事を突き詰めれば、それはお前の力になる。長い人生の中で、何かがダメになったとしても、何かに打ち込んだその事実は消えない。頑張れ、とは言わん。ワシは、今までの人生、いつも、誰に対しても、頑張れ頑張れと鼓舞してきた。でもなぁ。頑張りすぎるのは、良くないと、お前を引き取ってから思ったよ。」


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